地方の個人の農家へ行くことになって、自分自身も目からうろこの落ちるような話を多く聞くことが出来たが、カウンターパート2人にも、とても刺激になっていることを感じる。今まではとにかく農家さんに何か聞かれるのがコワイという感じであったが、私の話したことの受け売りでも何でも説明するようになったし、私への質問も多くなってきた。また、カウンターパートの一人(チーフ)が、副所長になって、一体どうなることやらと思ったが、検査が得意で飲み込みが早いもう一人のカウンターパートへのコンプレックスが多少解消されたのか、立場が上がったことで自覚が芽生えたのか、少しコミュニケーションを取れるようになって来ていると感じる。もう一人のカウンターパートも、自分が中心になって検査をしなければならないという自覚と、これまでいろいろ積み上げたことに自信がついてきたのか、今まではあまりなかった光景なのだが、チーフにちょっとしたことを教えたり、それをチーフが素直に受けいれるようになってきた。カンボジア人が教えあわないことについてこの1年半ものすごく苦痛に感じていてしばしば話もしてきたのであるが、もう少し見守って行きたいと思っている。もしかして私が口を出していたことで意地になっていた部分もあるのかもしれないと反省もしている。
今日(1月31日)、午前と午後で一人ずつ、カウンターパート2人に、これから残りの期間での計画について話をし、また、他に何かやってみたいことや勉強したいことはあるかなど聞いてみた。
チーフはもし出来るのなら、生化学検査を増やしたい、飼料検査などはこの部門でする仕事なのでは、などの意見があった。生化学検査については、乳用牛の飼養のほとんどないこの国ではまだそれほど重要ではないので、今は最低限の肝機能、腎機能の検査が出来れば十分ではないか、飼料検査はもちろん出来ればいいけど、新たに多数の機械の導入が必要であるし、私には経験がないし、王立農業大学には飼料分析の機械がかなりそろっていたので、もし必要ならそちらと連携を取って実施した方がいいのではという話をした。
2人とも、出血性敗血症のワクチン評価や、ニューカッスル病のモニタリング検査をしてはどうかという提案に対しては、血清ウイルス学のスタッフがどう思うかというところが不安な様であった。血清検査とウイルス検査を同じ部門で持っている国は、近隣諸国ではおそらくカンボジアだけで、今どう見てもこの部門のチーフとサブチーフの2人だけがものすごく忙しい状況が続いている。将来的に分かれる可能性があるのなら、血液学部門のスタッフに少しずつ仕事を移行させていくのもよいかと思ったのであるが、外国人である私が、外国人であることを利用して(・・私にはみんな親切で何でもどうぞという雰囲気もあるので)仕事の配分まで変えていくのは私の本意ではないとも思う。所長に今後の方針を聞く中で、慎重に考えていきたい。
また、もう一人のカウンターパートは、「農家はみんなニューカッスル病か家禽コレラで鶏が死んでいるというけど、本当はもっといろんな病気で死んでいるはずだと思う。鶏の病性鑑定依頼についてもっときちんと検査して、みんなで勉強するというのはとてもいい。フサコのクメール語が通じないところは私が説明するから大丈夫。何の病気で死んだのか、検査をしないから、農村獣医も州獣医スタッフもきちんと説明できないし、ワクチンも普及しない。」と、言っていた。チーフも、鳥インフルエンザとニューカッスル病の検査しかしていない状況が、農林水産省でも問題になっているのを聞いているとのことで、もっとこの件について取り組んだ方がよい、ぜひ勉強したいということであった。血液学セクションで大きく関わってくる検査ではないので、少し反応がこわかったのであるが、2人ともきちんと問題意識は持っていたし、後押しするようなことを言ってくれたのはとてもうれしい。
農家へ行くようになって、やってみたいこと、取り組むべきことが、たくさん浮かんできた。まだ整理がついていない状態で、特に今後の展開についてはやや中途半端な報告書になってしまったが、鑑定所所長やスタッフとよく話し合って、少しでも配属部門や鑑定所をよくしていけるような活動をしていきたいと思う。残りの期間でどこまで出来るかはわからないし、全ての問題を解決できるわけではもちろんないけれど、悔いの残らないよう、一日一日大事に過ごして行きたい。 |