牛出血性敗血症ワクチンに係る野外試験および血液原虫に係る疫学調査

目 的

1. 出血性敗血症に対する抗体価を測定し、野外におけるワクチンの効力を判定する。
2. 牛における住血微生物保有状況を調査する。
3. 採集した血液について基本的な血液学的検査を実施し、データについて検討する。

サンプリング

ココン州、モンリティー・カンパニーにおいて飼育されている牛から採血を行う(採材について会社は了承済)。約15回のサンプリングを通して300頭からの採血を予定している。

検査方法

1. 牛出血性敗血症に対する抗体調査にはELISA法を用いる。システムはタイにおいて開発し、専門家によりNAHPICスタッフに対して技術移転を行う。本検査に必要な試薬及びプラスティック類についてもプロジェクトから供与を行う。

2. 住血微生物検査は血液塗抹標本により行う。

3. 血液検査は、基本的な項目(赤血球数、白血球数、白血球分画、血清総蛋白、ヘマトクリット値、ヘモグロビン値、血中尿素窒素値)について行う。

期待される成果

1. 採材を予定しているココン州、モンリティー・カンパニーでは、導入時に口蹄疫および出血性敗血症に対するワクチンを接種しているため、経時的に採血することによりそのワクチンの効力を判定することができる。

2. カンボジア全域から牛を購入して肥育しているため、被採血牛の導入地域を把握することによって地域ごとの住血原虫感染状況を推測することが可能である。

3. 採材を行って検査を実施し、得られたデータを整理するというステップを踏むことにより、検査の手技や結果の考察についてスタッフの理解を深めることができる。

4. カンボジア国内における住血微生物保有状況に関する調査は、牛では10年以上前にラタナキリ州で行われたもの、および協力隊員が2002年7月〜2003年1月にタケオ州・プノンタマオ牛繁殖センターについて実施したものしか記録が残っていない。牛では斃死率の高い住血微生物病も存在するため、病勢はやや異なるものの他の感染症との鑑別という点から、現在の感染状況を把握しておくことが今後のNAHPICでの業務に有益である。

5. これまで実施されてきた牛の血液学的検査データについて見てみると、日本や欧米での正常値に比べ、血清総蛋白、ヘモグロビン値などが全体に低値であることがわかる。これは牛の品種や餌の違い、および内部寄生虫感染などに起因するものと考えられるが、本検査を通してカンボジア国内で飼養されている健康牛の正常値を明らかにすることにより、それを基本データとして今後の病畜検査に生かすことができる。

意 義

1. これまでにNAHPICスタッフのひとり(Dr. Hou Vannara)がタイにおいて出血性敗血症診断に係るコースを終えている。昨年は彼を中心として同疾病に対するワクチン効力に関する研究課題を行っており、本課題もその延長線上にある。出血性敗血症はカンボジアで最も重要な疾病のひとつであり、野外におけるワクチンの効果を明らかにすることは、今後の家畜衛生政策に大きな意味を持つと考えられる。

2. 当プロジェクトや他のドナーによる支援により、多くのNAHPICスタッフは周辺国で研修を受けている。しかし、NAHPICに搬入される検体が極端に少ないため、研修を通して知識や技術を習得していながらも現場で経験を積むことができない。それゆえ本研究課題を実施することによりフィールドやラボ内での活動の場が増え、研修で得た知識や技術を生かした経験を積むことができる。

3. 現在、青年海外協力隊(獣医師)隊員がNAHPICに派遣されており、検査手技や結果に対する考察などの指導を行っている。NAHPICスタッフが、本課題を通して協力隊員と共に採材し検査を行なっていくことで、効果的かつ確実に活動を続けていくことができる。

期 間

2005年2月より12月にかけて。

対象者

畜産局・家畜病性鑑定所、細菌学及び血液学部門