ルアンプラバン・フィールド活動記 その1の2
ポンドン村 (Pongdong Village) サイト・マップを見る
ポンドン村はルアンプラバン県内、サイヤブリへ向かう途中のメコン川を渡る手前にあり、ルアンプラバンからは1時間半程の距離である。
    ここでもまず、村長さんをはじめとする村の人たちから話を聞く事から始めた。この村では 104 戸の農家が暮らし、水牛を 115 頭、牛 48 頭、豚約 100 頭、山羊 16 頭、鶏約 2000 羽、アヒル約 1000 羽を飼養しているという。
ポンドン村の村長さん(右から3人目、チェックのシャツを着ている人)を囲んでの聞き取り調査
2004 年6-7月頃、殺虫剤を散布した牧野に水牛を放牧して7頭が死んだそうであるが、今年になってからはまだ出血性敗血症や口蹄疫などの発生はないという。ある農家では3ヶ月齢未満の水牛の子がいつも死ぬそうであるが、これはおそらく寄生虫(多分回虫)の重感染が原因であろう(EU によるプロジェクトの報告書でも問題視されていた)。発生状況と臨床症状からニューカッスル病(約 300 羽死亡)と豚コレラ(この4月に 20 頭死亡)と疑われる発生が見られた(確定診断はされていない)。
色の白い水牛。タイでは見かけたことがないが、ラオスでは普通に見られる。ミャンマーでお目にかかった白いゾウもこんなピンク色をしていた。
採材の最中に突然雨が降り出し、しばらく雨宿りを余儀なくされた。上の写真の少年は、そんな雨の中をびしょぬれになりながら立ちつくし、僕らが再び始めるのを待っていてくれた。風邪をひくからと手を引っ張って軒下に入れ、しばらく写真のモデルを務めてもらった。彼の横にいるのが家畜衛生センターのルアンプラバン支所で働くブントム女史である。
ハット・フアイ村 (Hat Houay Village) サイト・マップを見る
ハット・フアイ村はルアンプラバンから東北へ車を1時間半ばかり走らせたところにあり、まわりを山と深い森に囲まれたこぢんまりとした村であった。農家数は 89 戸、人口は 430 人とのこと。村にいる家畜数は、水牛 100 頭、豚 126 頭、山羊 44 頭、鶏約 1585 羽である。
    村の人たちの話から推察すると、雨期の初め、アブが多く発生する時期にトリパノゾーマ症が水牛で見られるようであった(病原性は弱いが、時々流産を引き起こす)。
他に水牛では Thelazia sp. による目の感染や、子牛の回虫症も問題になっているようだ。またこの5月にはここでもニューカッスル病を疑う発生があり、ほとんどの鶏が死んだという。
    ニューカッスル病や出血性敗血症、口蹄疫、豚コレラといった感染症は、ワクチンさえしっかり打っていればほとんどの場合防ぐことができるのであるが、様々な事情からきちんとしたワクチネーション・プログラムが立てられていないのが現状である。
ハット・フアイ村からの帰り、メコン川を見下ろす高台のレストランで昼食を食べた。
ラープというラオス料理(もちろんタイ料理にもあるが)。左の皿は何のラープだったか忘れたが、右の皿はメコンで捕れた魚の卵のラープだった。
採材で集めたのは血液と糞便。血液はその場ですぐに塗抹標本を作り(血液原虫検査用)、血清用の他に抗凝固剤を入れた血液も作った。糞便は内部寄生虫の検査用。これらをアイスボックスに入れて家畜衛生センターのルアンプラバン支所(下の写真)まで持ち帰り、その処理をした。
    まず血清を分離し、その間に
抗凝固剤入りの血液を使ってヘマトクリット値(血液中の赤血球の割合)の測定をする。これで貧血気味かどうかがだいたいわかる。ヘマトクリット値測定後のヘマトクリット管を顕微鏡下で観察し、トリパノゾーマ原虫の有無も調べた。そして塗抹標本と血清は2つに分け、ひとつをビエンチャンの家畜衛生センターへ、もうひとつはバンコクの家畜衛生研究所持って帰り、いくつかの感染症に対する検査をすることにした。糞便はルアンプラバン支所に残し、ブントムが寄生虫の検査をする。(20056月 プロジェクト長期専門家 柏崎 佳人 記)
ラオス畜産局長に提出した報告書を見る (pdf file)。 検査結果を見る (pdf file)。
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