ラオスの養豚事情
ラオスでの豚コレラの疫学調査にかかる技術移転がタイ人・日本人専門家により行われている。今回ビエンチャン郊外の養豚場を訪問する機会があったので報告する。同国の畜産は、牛・水牛の役用を中心に発達してきており、豚や鶏は庭先あるいは裏庭での副業的なものが中心で、家畜の 95 %以上は小規模農家に飼養されている。しかし、首都ビエンチャン近郊では近年、規模のメリットを生かした養豚が盛んになっている。

NONG TENG PIG BREEDING STATION (ノンテン種豚場)
FAO の援助により 1978 年に設立されその後農業省に移管された。現在は独立行政法人化されて農場での独立採算を求められている。繁殖母豚が 160 頭、種雄豚 12 頭が飼育され、年間約2,700 頭の子豚を生産し、その9割を離乳後 (45日令約 8 kg) に豚コレラ予防注射と去勢を終えて肥育農家へ販売している。一頭当たりの価格は33万キップ (約 3,300 円) を固定基準価格として、体重が1kg 増えることに 9,000 キップを上乗せしている。肥育農家は電話などで購入申し込みを行い、農家の希望の日時に販売(現金)している。肥育農家の一般的な規模は 10 頭で約 3ヶ月かけて 70-90 kg に仕上げるという。肥育農家は中間業者に生体1kg 当たり14,000 キップで販売し、中間業者は屠場で解体して市場での枝肉 1kg 当たり 22,000 キップで販売されている。
販売される離乳子豚(45日令)          
養豚場全景
センター長の Mr. Vilavong Vannachareun によると肥育農家および中間業者の販売利益の構図は次のようになる。(単位:キップ、1 円は約 100 キップ)
肥育農家子豚の購入価格 330,000
肥育農家肥育豚販売価格 (80 kg) 1,120,000
肥育経費(飼料/労働費)  640,000
肥育農家利益 150,000
肥育農家肥育豚購入価格 1,120,000
枝肉として販売した価格
(枝肉歩留まり 70 %)56 kg
1,232,000
中間業者の利益  112,000

イテポン養豚場
ビエンチャンから約 25 km 郊外にイテポン養豚場がある。農場面積は約5haで殆どが養魚のための池である。繁殖雌豚 135 頭、種雄豚 10 頭を飼育し年間 230 頭の子豚を生産している。生後 45 日令の子豚を 380,000 キップで販売、1kg 増える毎に 14,000 キップ価格が上がる。農場内に簡易な飼料配合施設を有し、米糠と現地産のトウモロコシ、タイ産配合飼料を粉砕、配合したものを繁殖豚に 1日 2.5-3 kg を 2 回に分けて給与している。子豚の飼料はペレットになっておりこれは全部タイ国からの輸入になっている。配合飼料の価格と輸入関税が高いので税金の1%削減を政府に求めていると言う。子豚生産農家が肥育を嫌う理由に肥育豚の収益が少ないことにある。肉質による価格制度が無いことやタイ産豚肉の輸入が増えており、タイ産と同じものを作っていては価格競争ができない。肥育期間 4−5 ヶ月で収益(労働費含む)が 150,000 キップでは経営が成り立たないと考えている。安価な飼料(キャッサバ、米糠など)と肥育期間が長く豚肉の質も低いと考えられる。
子豚の糞尿が養魚のえさとなる。
一腹 12 頭の子豚が哺乳していた。
コストまた養殖池からの魚の販売は年間約 30トンである。彼はラオス養豚協会の会長も勤めている。協会の会員は 42 農場あり 3,400 頭の繁殖雌豚と種雄豚 350 頭を飼育している。飼養管理技術や家畜衛生の技術が低く、定期的に集会を開いている。病気が発生してもラオスの家畜衛生センターや県の畜産事務所とのコンタクトもされておらず、定期的な技術指導を政府に望んでいた。施設の改善、飼料代金や種豚購入代金などは一般銀行からのローンを組んでいるが期間が 2 年で金利も 17-18 %との事であった。(20063月 プロジェクト調整員 遠藤 清美 記)
魚の養殖と養豚が上手く経営されている。
離乳前に去勢を実施していた。
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