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1. 地理並びに自然環境
    マレー半島南部とボルネオ島北部を合わせ、国土面積は合計33万338平方キロメートル。日本の面積の9割弱の面積の土地に、日本の16%程度の人口が住んでいることになる。人口の8割以上がマレー半島部分に居住し、主にマレー系、中国系、インド系の住民で構成され、サバ州、サラワク州には先住民族が暮らしている多民族国家である。それぞれの民族が持つ宗教、生活習慣の融合は独特な文化を生み、マレーシアの魅力のひとつを創り出しており、また、のんびりとくつろぐことのできる砂浜、南国の熱帯雨林、魅惑的な島々、神秘的で荘厳な山々など、自然美に溢れる国である。首都クアラルンプールは、もともと“泥の川が交わる場所“の意味。クラン川とゴンバック川の合流する場所に開けた街で、人口は100万人以上。
    マレーシアは熱帯性気候に属し、平均気温は26〜27度で気温の幅は21〜32度前後。年間降雨量は2000〜2500mmと多く、月平均でも200mmの雨が降る。マレー半島の東海岸とボルネオ島のサバ州、サラワク州では12月から2月にかけてが雨季にあたり、雨量が増える。ただし激しいスコールが降った後は雨が上がり、長時間わたって降り続くことは少なく、気温も下がりむしろしのぎやすくなる。
2. 社会経済状況
    
2003年10月、22年間にわたりマレーシアを率いてきたマハティール首相の引退を受け、アブドゥラ副首相が第5代の首相に就任。マレー系政党UMNO(統一マレー国民組織)を中核とした連立与党(BN:国民戦線)が、大多数の下院議席(219議席中199議席)を確保しており、政権は安定的に推移。
    1986年以降、外貨の積極的な導入による輸出指向型工業化政策を推進し、高度成長を達成。97年に通貨・金融危機による経済困難に直面。IMFの支援を仰がずに独自の経済政策を推進。98年9月に為替管理措置を導入し、99年2月以降に緩和。98年にマイナス成長を記録したが、製造業を中心に回復基調。2000年以降、プラス成長を維持。
3. 畜産の概況
    マレイシアにおいてはプランテーション作物の陰で畜産は目立たない存在である。農業総生産に占める割合は約10%であり、国家総生産においては3%にすぎない。畜産による生産額は1960年から1980年にかけて2倍以上の発展があった。これは養豚と養鶏部門の発展によるものである。生産額に対する畜種別貢献度は豚49%、鶏40%、牛10%、山羊1%である。飼育されている家畜には水牛、牛、山羊、緬羊、豚、鶏、アヒルがある。産業として養豚と養鶏は高度に発展しており、国内の需要を満たし多少の輸出力を持っている。これに対して反芻動物による生産は劣っており、牛肉は需要の約65%を自給し、山羊肉は約20%の自給率である。酪農については自給率は5%にすぎない。養豚と養鶏の発展は輸入飼料に依存しており、自国産飼料による自立した産業への発展が要求されるのに対して、肉牛と乳牛については産業の基礎がための段階である。
    回教徒は豚を不浄な動物とし、ヒンズー教徒は牛を神聖な動物と考えて食用にしない。中国人は主に豚肉を食べるために、人種と宗教と食肉の間には画然とした区別がある。こうした中で共通に食されるのは鶏肉と鶏卵である。冷蔵庫の普及率の低いことと関連して新鮮な肉に対する嗜好が強い。そのため肉用に、生きている牛約1万頭、羊2万頭がオーストラリアおよびニュージーランドから輸入されている。陸続きのタイからの肉牛の輸入、あるいは密輸は、1979年以来、しばしば口蹄疫の発生を引き起こし、マレイシアの畜産に大打撃を与えている。整備された屠場は大都市にはあるが地方にはなく、食肉加工産業は育っていない。乳製品についてはインド系の人々によるギー、ヨーグルト、牛乳の消費の他は、一般にお茶とともに飲まれる練乳があるが、還元乳、あるいは牛乳の飲用は盛んではない。輸入乳製品の大部分は脱脂粉乳と全乳である。
    畜産関係の行政、研究、教育機関としては、農業省獣医局、州政府獣医局、畜産開発公団、マレイシア農業開発研究所およびマレイシア農業大学がそれぞれの立場で畜産の発展に貢献している。獣医局は畜産行政一般と家畜衛生を統括し、獣医学研究所と畜産研究所を管轄している。獣医学研究所は家畜疾病の研究と診断、各種ワクチンの生産を行っている。畜産研究所は中央種畜牧場と獣医訓練所を合併して1974年に設立された。普及活動の拠点であるとともに乳牛、肉牛の飼育頭数増大のために種畜の導入、交雑種の育成・繁殖を行っている。
    マレイシアの国家経済計画では、畜産物消費ののびは人口増加率2.8%と所得増加率年3%から年間6%と予測されている。畜産物の供給量は、牛、豚、鶏で100%、牛乳20%、山羊肉30%自給を目標としている。養豚、養鶏の分野では、配合飼料、動物医薬品といった関連産業の発展もあり、自立した産業として個人企業主導で発展の見通しがある。これに対して肉牛、乳牛、あるいは山羊の飼育は、私企業が参入するような魅力ある産業に育っていない。したがって現在政府が最も力を入れている分野は、既存の農業と組み合わせた型での肉牛または乳牛の飼育農家の育成である。そのために優良種牛の導入、交雑種の配布、人工授精、農民の研修、銀行融資、牧草生産、または草地開発に対する資金援助、家畜保健に関するサービス、流通通路の整備といった面に協力な政策がとられている。