ミャンマー旅行記(元ベトナム在住専門家のヤンゴン・バガン旅行記)

テト正月休暇を利用して一週間ほどタイへ里帰りし、そのついでにミャンマーへも足を延ばしてきました。バンコクは5年間も暮らした街なので、空港から街へ向かうタクシーの中では道路のあちこちに表示されている行き先を示す地名を目にしただけで何ともワクワクしてきました。街自体は思ったほどには変貌を遂げていなかったのですが(職場である研究所のあったカセサート大学の変わり様には驚いたのですが)、あれほどタイにいた頃には頭にきていたタイ人のマナーの悪さなどが、ベトナムから来た我が身には非常に素晴らしく思え、改めてタイはすごいなあと感心した次第です。最もしばらくいたらまた何かと文句を言いたくなるのでしょうが。

ミャンマーといえばスーチーさんと軍政府の確執くらいしか思い浮かびませんでしたが、彼らの国民性が僕の思い描いていたものとえらく違っていたので、海外へ出ることに慣れきっていた自分にとってもすごく新鮮で、本当に久しぶりに良い刺激を受けました。まず第一にミャンマー人は外国人に対して変に物怖じすることなく、気軽に声をかけてきます。特に色々なことに気を使って声をかけてくれ、それでお金を要求されたりという事も皆無でした。また英語を話せる人が多いというのも驚きでした。街の雰囲気には秩序があって明らかに中国的な混沌とした世界とは一線を画しています(ベトナムなどは中国的な部分が多く、特に交通事情などはその最たる例でしょう)。控えめでありながら親切でよく気が利く人が多いと感じました。在ヤンゴンの友達(やはりJICAで働いています)によれば、「ミャンマー人には給料が安くても国のために働くという気概のある人が多くて頭が下がる」という評価でした。そういえば国連の前の前の前の前位の事務総長であられたウタントさんはミャンマー人だそうです。

さてミャンマーといえばバガンです。東南アジア三大遺跡(カンボジアのアンコールワット、インドネシアのボロブドゥール、バガン)のひとつで、以前、その写真を見てからいつか行きたいと思っていました。ヤンゴンの友達の言葉に甘えて航空券とホテルの手配をお願いし、いつ落ちてもおかしくない飛行機(ボーイングやダグラスではなく、イリューシンとかツポレフという名前のやつ)に乗っかって出かけてきました。バガンは11世紀から13世紀に書けて250年くらいの間栄えた地で、最盛期には3000を越えるパゴダがあったそうですが、現在でも約1000のパゴダが乾燥した平原に散らばっています。飛行機は朝の8時前に到着、既に日差しの強い中、ホテルから自転車を借りて遺跡巡りに出かけました。自転車を走らせていくと道の両側にパゴダが現れます。中に入ってみるとどんな小さなパゴダにもいわゆる大仏が安置されており、何とも不思議な空間を作り上げています。そうした自転車目線からの眺めもなかなか素晴らしいのですが、パゴダの上に登って眺める景色には格別の迫力がありました。

翌日の午前中はバガンの東のはずれの方まで自転車で出かけました(ホテルは西のはずれにあります)。バガン村で水を調達し、左右に現れるパゴダに寄り道をしながら荒れ地の中の舗装道路をひたすらこぎ続けました。村から30分ほども走った頃、頭の隅っこの方で意識するともなく恐れていたパンクに襲われました。数年前にアルゼンチンで経験した悪夢がフラッシュバックし(2日間に3回愛車がパンクした)深い絶望の淵に立ちましたが、すぐに気を取り直してとにかくホテルへ戻るべく歩いて自転車を押し始めました。と、しばらくして若者が通りかかり、近くの村へ行くように教えてくれました。10分ほど歩いて村の入口まで来ると、中学生くらいの男の子が木陰で休んでいます。彼に身振り手振りで状況を説明すると、すぐに村の中でパンク修理をしてくれる人の家まで連れて行ってくれました。修理のおじちゃんは上半身裸で下はミャンマー人男性特有の布を巻いている姿。タイのカンチャナブリでガソリン車に間違って軽油を入れられたときに現れたメカニックと同じ出で立ちです。それはさておき慣れた手つきでパンクの修理に取りかかってくれました。観光地といえども村の中は平和そのもの、珍しく訪れた日本人を見ようと子供達ばかりでなくいい大人も集まってきます。その中のひとりに英語を話せる人がいて、それなりに意志の疎通もできました。何と4カ所も穴があいており修理に1時間近くかかったので、その間に写真を撮ったり子供達を遊ばせたり色々な質問に答えて村人の好奇心を満足させたり。それなりに気を使いながら待っていたのですが、何とも気持ちの良い待ち時間でした。どうも僕はこんな村の空気に心が揺らぎ易い体質の様です。この出来事があって余計にミャンマーに対する印象が深まったのは言うまでもありません。(2002 プロジェクト長期専門家 柏崎 佳人 記、「ベトナム国立獣医研究所強化計画」プロジェクト 元短期専門家)

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