左右に現れるパゴダに寄り道をしながら荒れ地の中の舗装道路をひたすらこぎ続けていたところ、村から30分ほども走った頃、頭の隅っこの方で意識するともなく恐れていたパンクに襲われた。数年前にアルゼンチンで経験した悪夢がフラッシュバックし(2日の間に愛車が3回パンクした)深い絶望の淵に追い込まれたものの、すぐに気を取り直してとにかくホテルへ戻るべく歩いて自転車を押し始めた。と、しばらくして若者が通りかかり、近くの村へ行くように教えてくれた。10分ほど歩いて村の入口まで来ると、中学生くらいの男の子が木陰で休んでいる。彼に身振り手振りで状況を説明すると、村の中でパンク修理をしてくれる人の家まで連れて行ってくれた。修理のおじちゃんは上半身裸で下はミャンマー人男性特有の布を巻いた姿。タイのカンチャナブリでガソリン車に間違って軽油を入れられたときに現れた、子供のようなメカニックと同じ出で立ちだ。まあそれでも慣れた手つきでパンクの修理に取りかかってくれた。観光地といえども村の中は平和そのもの、珍しく訪れた日本人を見ようと子供達ばかりでなくいい大人も集まって来る。その中のひとりに英語を話せる人がいて、それなりに意志の疎通もできた。何と4カ所も穴があいており修理に1時間近くかかったので、その間に写真を撮ったり子供達を遊ばせたり、色々な質問に答えて村人の好奇心を満足させたり。それなりに気を使いながら待っていたのだが、何とも気持ちの良い待ち時間であった。(2002年 プロジェクト長期専門家 柏崎 佳人 記、「ベトナム国立獣医研究所強化計画」プロジェクト 元短期専門家) |