ミャンマー中央部における高病原性鳥インフルエンザの発生 |
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ミャンマーではこれまで高病原性鳥インフルエンザの発生は認められていなかったが、今年3月に入ってその感染が疑われる症例が同国中央部マンダレー管区において報告され、H5N1型ウイルスによる鳥インフルエンザの発生と確認された。初発例はマンダレー市内において3月8日に発生した。
感染した鳥の羽数や殺処分数などのデータを下の表にまとめた。マンダレー、サガイン管区においては4月5日を最後に新たな発生が途絶え、その後現在まで再発は認められていない。約1ヶ月間でその拡大を抑えられたのは、これまでに周辺諸国での発生をふまえてその対策を十分に考慮し準備してきたからであろう。当プロジェクトを通しても、少額機材の緊急支援、日本人専門家の派遣、ミャンマースタッフの鳥インフルエンザに係る研修への受け入れ等、種々の対策を進めてきた。またこの発生の直前に JICA ミャンマー事務所が鳥インフルエンザ感染予防のための啓蒙ポスター(下の写真)を作成し配布しており、結果的に非常にタイムリーな投入となった。
この発生を契機にミャンマーの民主化遅延に反対して援助を控えていた欧米諸国などもその姿勢を変化し始め、EU はミャンマーを含めた東南アジア諸国に総額1300万ユーロの支援を決めた。 |
上図はマンダレー市内の発生農場地図である。緑色の線で囲まれた部分が旧王宮のある区域で軍によって管轄されている(写真下左側の区域)。円内の赤い点が汚染農場、青い点が殺処分された農場で、円の半径は 1 km である。番号は発生の順番で、発生日は以下の通り:1. 3月8日、2. 3月15日、3. 3月16日、4. 3月17日、5. 3月21日、6. 3月22日、7. 3月23日、8. 3月28日、9. 3月31日、10. 4月1日、11. 4月2日、12. 4月3日。今回の発生に際して診断業務を担当したマンダレー地域診断センターは、初発生地である番号1の円内に位置する。 |
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H5N1に汚染された養鶏/ウズラ農家数
管区 |
鶏 |
ウズラ |
合計 |
マンダレー |
35 |
23 |
58 |
サガイン |
16 |
1 |
17 |
合計 |
51 |
24 |
75 |
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3月16日までの発生および殺処分羽数
管区 |
農家数* |
飼養羽数 |
死亡羽数 |
殺処分羽数 |
死亡+殺処分総数 |
鶏 |
ウズラ |
鶏 |
ウズラ |
鶏 |
ウズラ |
鶏 |
ウズラ |
マンダレー |
鶏14+10 |
18,575 |
31,500 |
1,000 |
4,482 |
13,098 |
27,018 |
14,098 |
31,500 |
サガイン |
31 |
31,400 |
- |
3,128 |
- |
872 |
- |
4,000 |
- |
*農家数は汚染された農家と殺処分された農家の総数
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今回の発生で殺処分された鶏とウズラの総数
管区 |
鶏 |
ウズラ |
殺処分による損失額 |
農家数 |
羽数 |
農家数 |
羽数 |
マンダレー |
180 |
230,000 |
68 |
170,000 |
3千万円 |
サガイン |
228 |
120,000 |
69 |
150,000 |
1.5千万円 |
合計 |
408 |
350,000 |
137 |
320,000 |
4.5千万円 |
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コントロール時の様子を伺える写真を何枚かアップした。検問をもうけて通行規制を行ったのは当然のことであるが、畜産獣医局の局長が現地を訪れた時にも、規制を受けて発生地まで入れなかったそうである。軍政によって指揮系統がはっきりしている国だからこそ、今回のような短期間で発生を抑え込むことができたのかもしれない。(2006年9月 プロジェクト長期専門家 柏崎 佳人 記) |
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