サンプリング百景 --- キボガ、再び 2007 年 11 月 12 日

      ウガンダには今年 3 月から視聴覚の短期派遣隊員 5 名 (通称チーム・ビターノ) が配属され、JICA/JOCV の活動を記録し映像としてまとめている。今月に入り、やおら獣医隊員 4 名に対する取材が始まったのであるが、「専門家との絡みも映像として欲しい」というリーダー日比野さんの要請により、再びキボガを訪れることになった。特に筆者自身が採血したりするわけではないので (実際、筆者がついて行っても邪魔をしているだけなのだ)、隊員との面白い絡みなどは期待できるはずもない。しかしまあキボガであれば日帰りができるので快く承諾した。実際に撮影を担当する村井くんは気合い十分、前日からキボガ入りし、松波くんの宿舎であるゲストハウスに泊まっていた。
      当日、約束の時間を 20 分過ぎてもドライバーが現れず、しびれを切らし自分で運転していこうとハンドルを握りアパートを出たところ、遅刻したドライバーが坂を下りてきた。助かった、とばかりに運転を交代し、キボガへ向けて出発。10 分遅れで到着したら、既にスタッフが全員揃っていた。

夜、山羊が眠る小屋の中で採材を始める。

山羊小屋の中で作業をするロバートと松波くん。

採材が終わり、放たれた山羊が駆け抜けていく。

最初に訪れた農場、ただただ広い。

      1 軒目の牧場ではまず山羊から採血をした。夜間、山羊が眠る小屋があり、今朝はその中から出さずにに留めておいてくれたので、次から次へと捕まえては採血し、短時間で予定頭数を終了。しかし牛はそういうわけにはいかなかった。約 400 頭肥育しているそうだが、クラッシャーがないため 1 頭ずつ捕まえて抑え込み、採血とツベルクリン注射をすることになった。しかも牛を集めた囲い込み内の地面がグチャグチャにぬかるんでいて足場が悪い。牛を捕まえる牧場のスタッフにとっては最悪のコンディションであり、服や体も泥だらけになってしまう。筆者などは傍観していただけなのに、帰り泥を浴びて服を汚してしまった。牧場スタッフの中のひとりは途中で服を脱ぎ捨て、パンツ一枚になって参戦。しかしだからといって他のメンバーよりも牛の捕獲に貢献していたとも言えないのだが、、、。
      この囲い込みの一部は開放状態になっており、そこにひとり門番が配置され、逃げ出そうとする牛を叩いて中に戻す役割を担っていた。しかしこの男がまた使えないヤツで、暗い上に覇気がなく、牛になめられ、何頭も易々と逃げ出して行った。当然、他のスタッフからの非難を浴び、こいつはあえなく途中退場、現場から姿を消し、黄色いショーツをはいている兄ちゃんが取って代わった。次のこいつはなかなか明るいよくしゃべる男で、「ムズング (外国人) がどーした、ムズングがあーした。」と現地語で叫んでは、ケタケタと笑い、その間に牛をビシバシ叩いて逃亡を阻止していた。

採材前に談笑する。

地面がぬかるんでおり、牛を抑えるのが一苦労だ。

逃げ出した牛を 4 人がかりでとっ捕まえる。

ようやく牛も観念し、みんな笑顔でカメラに向かう。

松波くんと村井くん。

松波くん、ツベルクリン注射中。

      視聴覚隊員の村井くんは写真撮影とビデオ撮りに大忙しだった。しかし日陰のない炎天下での作業に加え、牛の保定に時間がかかり採材が長引いたため、次第に血糖値の低下をきたし、徐々に元気がなくなっていった。こういうときには一粒の飴玉が一時的にしろ血糖値を上げ、満腹中枢を刺激するものだ。いつもは子供を釣るために飴玉を持ち歩いている筆者であったが、この日は不覚にも忘れてしまい、申し訳ないことしきり。実は筆者もかなり腹が減っていて飴玉をなめたかったのだ。というわけで、2 軒目の牧場へ出かける前にみんなで街でソーダを飲んだ。

このぬかるみは生半可ではない。

この中で牛を抑えつけるのだから大変だ。

ぬかるみにはまりロバートにバトンタッチする。ロバートはすたこらサッサと歩いて行った。

何とか抜け出して柵外に生還したものの、あえなく退場。何故、松波は泥の中を歩けないのか。田植えでもして鍛えろ!

逃げ出した牛を捕まえに走るが、結局は牛に負けた。

みんなで仲良く泥を流す。

      ロバートもモーゼスも 2 軒目の牧場の場所が定かでなく、事務所の副所長である Dr. カムラシが、バイクに乗って「グッド・アフタヌーン」とどこからともなく参上した。何とも微妙な軽さを持った男で、握手する手がなまめかしい。そのカムラシの先導で牧場へ向かうも、まるでブッシュの中の獣道であり、しかも道の両脇にトゲのある灌木が茂っているようなところで、我がプロジェクト・カーは傷だらけになってしまった。帰りは別の道を通ったのだが、ぬかるんではいたものの道幅はそれなりに広く、「最初っからこっちを通れよな」と頭を小突いてやりたかったが、そんなことをしていたら専門家は勤まりません。辛抱辛抱。
      この牧場も日陰が少なく、炎天下の中ひたすら牛の到着を待つ。ようやっと来たなあと思ったのも束の間、あれれと言っている間に牛はあらぬ方向へ行ってしまった。すぐにまた戻ってくるのだが、またしても別の方向へと消えていく。 3 度目にようやくクラッシャーの方へ集められてきたが、そのクラッシャーも非常にちゃちな代物で、ちょっと押すとぐらぐら揺れるスイング式、スイングして良いのはジャズぐらいじゃないだろうか。地震の時には揺れを吸収するかもしれないが、普通の場合はどうなのだろう。こんなんで大丈夫なんだろうか、と誰もが感じる中でサンプリングが始まった。牧場のスタッフが慣れていないのかクラッシャーの中に牛を詰め切れず、根岸線乗車率 73% 程度のスカスカ状態であるため、牛が動いてしまい保定に時間がかかる。大振りな角を持つアンコーレ牛ばかりであるため、それが邪魔をして余計にもたつくのも原因だ。何か効率の悪いサンプリングだったが、写真を撮っている分には面白かった。

2 軒目の牧場。集まってきた牛はここをグルグル 2 周した。

クラッシャーに詰め込んでいく。

Dr. カムラシがロバートの手伝いをする。

ひ弱なクラッシャーで、保定もままならない。

小さいのはクラッシャーの外で捕まえて採材。

白蟻を食べる 3 人。

      山羊小屋に着くと、その近くのある場所からひらひらと舞う沢山の羽が地面から立ち上るのが見えた。ロバートとモーゼス、それにドライバーのキワヌカまでもがそそくさとそっちの方へ駆けつけた。行ってみると 3 人はその虫を競うように拾って口に運んでいる。White Ant だと言うので、「Termite か」と聞いたら、Termite ではないと言う。日本語だとどちらも白蟻ということになるが、本当は違うものだということを初めて知る。ちなみに村井くんがトライするも、味の方はイマイチだったらしい。この 3 人は「甘いんだ」とコメントしていた。
      この牧場で飼育している山羊は 7 頭のみ。囲いがない場所であったためにあちこちに逃げ回り、捕まえるのに苦労をしていたが、それでも程なくして終了し、本日はこれで打ち止めとなった。キボガの街へ戻り、いつ行っても牛肉スープか煮豆しかないレストランに入り、遅い昼食を食べる。このレストランのウエイトレスは、一度に 2 人分しか注文を取ることができないのであった。

壁板のない小屋での採血。山羊は逃げ放題だった。

山羊の耳標番号を確認する。

      事務所に戻るとサンプルを片付け、その後は村井くんの要望でスタッフの紹介+ラボでの仕事についてビデオ撮り。村井くんは先週、ムバレへ行って中田さんを取材している。今週末から来週前半にかけては平野くんのクミへ、そして来週後半には小林さんがいるキルフラへ出かけるという。どんなビデオに仕上がるのか楽しみだ。

日当を渡すと、モスレムのロバートが十字を切る。

カメラに向かってラボの説明をする松波くん。

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2007 年 11 月 長期専門家 柏崎 佳人 記
"短期獣医隊員活動"のスライドショーをダウンロードする。(File Name: Uganda-JOCV'07.mov)