JICA 側の今後の展望と課題
キルフラ・ディストリクトには、カゾセンターと同じ立場のラボ施設がもう一つある。サンガ(Sanga)というムバララ街道に面する町の獣医事務所には、ドイツの GTZ が援助した立派なラボの建物がある。ちょっと前まで2枚のソーラーパネルがあり、いろいろな実験設備があったようだが、今は建物しかない。整備したのはかなり前のことだが、今では換金できそうなものは全て失われている。どこに行ってしまったのだろう。
この施設を見た帰り道、カゾセンターもあと何年かしたら、このようになってしまうのだろうかと考えた。もしそうなったとしたら無益なお金の使い道である。そのような空しい例は過去にいくらでもある。そうならないためにはどうしたらよいのだろう。
今回の「家畜疾病対策計画」プロジェクトは2年の計画である。2年経って地方獣医事務所に誰も来なくなり時間がたてば、元の木阿弥になるのは目に見えている。このプロジェクトがまだまだ続き、ちょくちょく見に行けるのであれば、もっとどうにかなるのではないかと思う。しかし、それには更なる投資が必要となり、投資効果を見出せなければ盗人に追い銭ということになってしまう。
この地域における現金収入としての畜産の重要性はいうまでもなく、地元での期待も大きい。もちろん、インフラや教育や保健医療など、ほかにも重要なポイントはいくらでもあるだろう。しかし、今回の短期派遣あるいは2年間のプロジェクトだけで、あとはよろしくとウガンダ側に言ったところで、ウガンダ側にその後をしっかりやる能力はないと思う。誰かがたまにはやってきてサポートしたり、目をつけておいたりしないと、今回の事業はやりっぱなしで終わってしまう。
たとえプロジェクトが続かなくても、JICA ウガンダ事務所の誰かが1年に一回見に来るだけで、設備が散逸する期間を延長させることが可能なのではないだろうか。さらに、物理的な面のみならず、気持ちの面から考えても、たまには日本人がやってきて何かしているみたいだな、と感謝されることも増えるのではないだろうか。「昔来ていた日本人」よりも、「今でも来ている日本人」の方が有難みが増すと思う。
さらに必要であれば、近隣諸国から、この分野の専門家なり、隊員でもたまに見に来てつないで貰えばいい。ウガンダ政府はともかくとして、地元住民の期待は大きい。今回の隊員派遣は最初の一歩であるに過ぎず、最終目的である疾病診断能力の向上および地元農家の所得向上までにやるべきことはたくさんある。地方獣医事務所のサポートは、最低 10 年、できれば 20 年は続けてほしい。
さらに、農業畜産水産省の家畜疾病診断疫学ラボと連携し、家畜疾病対策体制を強化していくという、家畜疾病対策計画プロジェクトの上位目標がある。ぜひとも必要な連携ではあるが、地方獣医事務所の現状を考えると、これまたプロジェクト終了後の予算獲得に難航して、サンプルの輸送や、トレーニングや教育のための人材交流がはかどらない可能性が高い。形を変えてでもサポートし続けることが重要であると思う。
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