衛生キャラバン (平成 20 年 7 月 22 日、ムバレ)

      クミの獣医事務所へアフリカ開発銀行による NALPIP (National Livestock Productivity Improvement Project) からの冷蔵庫を届けに行った翌日、たまたまムバレの小学校へ巡回興行に来ていた協力隊衛生キャラバン隊の活動風景を見学に出かけた。メンバーは村落開発の長期隊員 7 名 (間、増井、松岡、矢田、安本、豊井、増田) +この小学校で働く養護教員の久芳さんと、お医者さんでエイズ対策隊員斉藤くんの計 9 名である。
      久芳さんが働くセント・ジョゼフ小中学校には、以前にも一度郵便物を届けに出かけたことがある。その時、久芳さんから、「前の校長の評判が悪く、その校長の怨念を払うために呪術師を呼んでお祓いをした」、だとか、「お祈りをすれば車がもらえると信じて疑わない同僚の先生がいて、あなたも車がもらえるように祈りなさい、と言われて困る」、などという話を聞いていたので、いったいどんな学校なのだろうかと興味津々だった。しかし朝日が降り注ぐ中、降り立ったその学校は、エルゴン山を望むことができる高台に建ち、カラッと晴れ上がった空がよく似合う明るい雰囲気に満ちていた。

Mt. エルゴンを望む St. Joseph 小学校

St. Joseph 小学校

まずは手慣らしに歌で盛り上げる。左からミティアナの豊井くん、カリロの増田くん、ムピジの間さん。

暇を持て余して日本人をからかう小学生たち

      学校に到着してしばらくすると、早くも悪ガキどもが集まってきた。いったいこれから何が始まるのか、準備をしている隊員の様子を大きな目で見つめている。そんな子どもたちが準備の邪魔をしないようにと、間さんと豊井くんが楽器を奏で歌をうたい、子どもたちの興味をそらす。ところが授業の休み時間に入るとあまりにも多くの子どもたちが詰めかけ、すぐにコントロールが効かなくなってしまった。
      次の授業時間が始まると、先生方がムチを手に子どもたちを教室へ追いやったので、何とかまた落ち着きを取り戻した。今日、衛生キャラバンの対象に選ばれたラッキーな子どもたちは 3 年生である。ウガンダの先生方はなかなか過激で、悪ガキどもをビシバシと叩きながらきれいに並べていく。そしていよいよ衛生講座の始まりとなりました。内容は 4 部構成。最初は松岡くんによるバイ菌と手の洗い方の授業、次はキラキラ星の替え歌で「洗おう洗おうソング」の振りを練習。そして実際に手洗いのデモンストレーションをグループに分かれて実施。最後に清潔にすることの大切さを劇で見せる。上演時間は 2 時間を超える大作だ。その様子は以下の写真でご覧頂きたい。

いよいよプログラムのスタート。まずは松岡くんがバイ菌についての授業を行う。

続いて手の洗い方についてわかりやすく言い聞かせる。デンプンをバイ菌に見立てて手に塗り、イソジンで紫色に染めておいてきれいに洗ってみせる。うまく考えたものだ。

きらきら星の替え歌、「洗おう洗おうソング」の振りを教える増井さん (左) と松岡くん

子供たちも参加してみんなで踊る。

これから男子だけで「洗おう洗おうソング」を歌って踊る。

男子が踊り、女子は見守る。

手洗いの練習、「次にやってみたい人?」 右奧が久芳さん

大変よくできました。


いよいよ創作劇の始まり始まり、、、矢田さんと松岡くんがきれい好きな夫婦の役


矢田妻に横恋慕する青年の役は豊井くん


呪術師、増井さんに松岡・矢田夫婦の仲を引き裂くように頼む豊井くん

松岡旦那に呪いをかける増井呪術師

呪いをかけられた松岡旦那、掃除も何もしなくなり、飲んだくれる。

バイ菌が登場 (左から間、増田、斉藤)

バイ菌が松岡旦那をやっつけた隙に、矢田妻を横取りしようとする豊井青年

呪いにより矢田妻までもが倒れ、ひどいことをしてしまったと後悔する豊井青年


松岡旦那の目を覚まさせ、呪術師と戦うようにクリーン・レンジャーのベルトを授ける豊井青年

ベルトをはめ、クリーン・レンジャーに変身する松岡旦那


バイ菌をやっつけるクリーン・レンジャー

フィナーレはみんなで手洗いのうた


      筆者は時間切れで終了直前に学校を後にした。カンパラへ向かう車の中、何の気はなしに入れた CD からユーミンの "A Happy New Year" という歌が、まだ 7 月だというのに妙な現実感を伴って流れてきた。車窓の景色が沈み、歌声だけが頭の中に響く。曲の途中で突然、雨が降り出した。すると今度はフロント・グラスを叩く雨音がユーミンの歌に取って代わり現実となる。周りの景色も色を取り戻してきた。しかしその向こう側でユーミンの「今年も沢山いいことがあなたにあるように、いつもいつも」という声が聞こえる。隊員のみんなもそういう思いを秘め、ここで活動を続けているのだ。ウガンダのちぎれた雲をひろい集めて胸に抱き、日本へ帰る頃にはもうそれも現実ではなくなっているのだろうか。

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2008 年 8 月 長期専門家 柏崎 佳人 記