プロジェクト・サブサイト 追加情報 --- 2007 年 8 月現在 (サイトマップを見る)

地方獣医事務所における活動のひとつとして、協力隊員の助けを借りて家畜疾病の調査をする計画を立てた。ムバレ、クミ、キボガ、キルフラの 4 ヶ所は短期派遣の獣医隊員で対応し、ムピジは既に配属されている村落開発の隊員の中で興味のある人を募り、活動を活性化しようと目論んだ。幸いなことに 4 名募集した短期派遣枠には日大のてこ入れが効いてちょうど 4 名の応募があり、予定通りに確保。またムピジでも現在派遣されている村落開発隊員 10 人全員に参加してもらえそうな状況で、当面の心配は調査を始めるまでに機材や試薬、消耗品類が揃うかどうかという点に移ってきた。そこで遅れを取らぬよう、8 月前半にサブサイトである獣医事務所を再訪し、必需品のチェックを行った。

ムバレ獣医事務所
      ムバレ事務所では所長の Dr. ウェレに話を聞いた。事務所にはランドローバーがあり、燃料費を出してくれればそれをサンプリングに使っても良いとのこと。恐らく結核はこの地域では稀だろうが、西部より持ち込まれた牛には感染が認められるかもしれないという意見であった。ブルセラについてはよくわからないが、この地域でも問題であることには間違いない。このところランピースキン病の発生がすごく多いとのこと。他には狂犬病と嚢尾虫症についても今後、調査を実施したいという。
      機材についてはおおむね揃っている。冷蔵庫はプロパン・ガスを燃料とするもの。遠心器、ヘマトクリット遠心器などもある。いったい誰がオーダーしたのだかメスシリンダーが数多く倉庫に眠っていた。洗浄ビン、ろうと、シャーレなどもあったが、肝心の試薬ビンやビーカーなどはない。また血液塗抹について、メタノールがないためにリーシュマンで染色しているとのこと。
      一番の問題は電気で、料金不払いによりずっと止められている。県の一機関でありながら電気が止められるとは驚きである。所長はこの事態を改善するため、今回の隊員派遣を絶好の機会と捉えており、担当のボスに陳情をするため筆者は県庁まで引っ張って行かれた。返事は非常に肯定的なものであったが、本当に電気の供給が再開されるのかどうかは不明である。

ムバレ獣医事務所で、Dr. ワキムウェレ (左) とエンテベ・ラボの所長、Dr. アデムン。

カフェ、もちろんビールも飲める。

ムバレの街並み

洋式トイレの使い方を説明したポスター (県庁にて)

クミ獣医事務所
      クミ事務所では所長の Dr. オンジャイトに話を聞いた。ここでもやはり結核は西部から来た牛では問題かもしれないとのことで、特に結核検査はそういった牛を導入した農家で実施することにするという。ブルセラはもちろんのこと、トリパノゾーマも問題であるらしい。トリパノゾーマ、つまりツェツェ・コントロール用に配布するという中国製の自転車がラボ内に山積みされていた。普通、自転車であれば立てた状態で並べて保管すると思うのだが、山積みしてしまうという事がさもあたりまえだという感覚に、今後、診断業務を根づかせていくことの難しさを少し感じた。
      前にも書いたとおり、クミには診断用の機材がほとんど揃っていない。冷蔵庫が一台あるのみで、それも壊れていてエレメントと呼ばれる部品を交換する必要がある。また水を上のタンクに汲み上げるためのポンプも壊れており、これは買い換える必要がある。他にあるのはビーカー、ろうと、メスシリンダー、洗浄ビン。試薬類ではキシレン、フォルマリン、グルコース、塩酸、液体パラフィン、生理食塩水タブレット、シリコンであった。一体誰が何の目的でこれらの薬品を供給したのか理解に苦しむ。
      街そのものはこぢんまりしており住みやすそうである。近くにセルフ・コンテインドのロッジがあるので、短期隊員が来たらそこに住めばよいだろうとのこと。計画停電あり。

Dr. アデムンの出身地であるクミの街

クミの街

クミの郊外にあるビシナ湖

ビシナ湖畔

キボガ獣医事務所
      キボガ事務所では前回同様、所長代理の Dr. カムラシと若い Dr. ンセレコが対応してくれた。ダニ媒介性の疾病が最も重要である事には変わりないが、バベシアは少ないという。川沿いでトリパノゾーマが多く出るというのも前回同様。ランピースキン病はそれほど発生はない。
      キボガもムバレ同様に機材はかなり揃っている。唯一必要なのは遠心器であろう。ここでも小から大まで、様々なサイズのメスシリンダーが沢山ある。一体誰がメスシリンダーばかり各事務所にばらまいたのであろうか。冷蔵庫は 2 台、冷凍庫が 1 台ある。白血球を数えたいが計算盤がない。検査のためのクイック・リファレンスのようなものも欲しいとのことであった。
      キボガにも調査に使用できる車輌がある。県が所有するゲストハウスがあるため、隊員が赴任した際にはそれを宿泊施設として使用可能。9 月下旬までに使える状態に整備してくれるという。電気は他の街同様にとても良いとは言えない状況であり、冷凍庫で常時、氷を準備しておくことで対応している。

Dr. カムラシが経営する動物医薬品店の看板

別の動物医薬品店の看板

県のゲストハウス、隊員はここで暮らすことになる。

県のゲストハウス

キルフラ獣医事務所 (カゾ獣医センター)
      キルフラでは所長の Dr. ムギシャが不在であったため、ブレンバ・サブカウンティーの Dr. ルシータと、カゾ・サブカウンティーの Mr. カトに対応していただいた。エンテベからは前回同様に Dr. デオと出かけた。実際に隊員が赴任するのはキルフラの獣医事務所ではなく、カゾ・サブカウンティーにある獣医センターとなる。言わずもがな、プロジェクトが支援する 5 ヶ所の獣医事務所の中で最も条件の厳しいところであり、それだけに先が楽しみな面もある。
      ここのセンターではまず、インフラの整備をしなくてはならない。特に電気、水回り、そして屋根である。このサブカウンティーには電気の供給がないため、センターにはソーラーパネルが取り付けられているが、現在では全く利用されていない。それゆえ車用バッテリーをいくつかつないで蓄電し、それにインバーターを接続して直流を交流に変換し、冷蔵庫や遠心器、顕微鏡などに使うということになる。水については新しいタンクを雨水の貯水槽の上に設置し、貯水槽からタンクへポンプで水を汲み上げることにより、センター内へ水を供給する。また現在、センター内で雨漏りがひどく (特に検査室)、屋根を葺き替える必要がある。
      隊員の宿舎について、カゾの街にも簡易ホテルなどがないことはないのであるが、とても清潔で快適だとは言い難い状態であるため、センター内の一室を居室として使用するとの了解を得た。寝具を揃えれば十分に寝泊まりできる。

雨水を貯める水槽の上に給水用の小さなタンクが乗っており、ポンプで水を汲み上げると各部屋に給水される。

センターに水を盗みに来た少年。貯水槽の水を盗りに来る人が後を絶たないそうだ。

左から獣医師のルシータ、エンテベ・ラボのデオ、ラボ技術者のカト。屋根をどうするか話し合っているところ。

内部では電気まわりの話し合いになった。バッテリーをつないで蓄電し、それをインバーターで交流に換える。

ムピジ獣医事務所
      ムピジでも所長の Dr. セキウンガが不在であり、副所長の Dr. カバウダに話を聞いた。ムピジではゴンバ・カウンティーに牛が多く、その中のマドゥ、カブラソケ、ジェゴンザの 3 ヶ所のサブカウンティーで調査を実施したいという希望であった。事務所にある機材は顕微鏡、ヘマトクリット遠心器、サンヨーの冷凍庫など。ここにも沢山のメスシリンダーがある。冷蔵庫の状態はひどく、新しいのを購入する必要がある。
      ムピジでは多くの村落開発の隊員が活動を行っている。それゆえこの県では新たに短期派遣の獣医隊員を呼ぶことはせず、村落開発の隊員の中から希望者を募って調査に加わってもらえればと考えてきた。村落開発隊員として現場で働く上で、農業と畜産は切っても切り離せないはずである。また彼らの中からも牛耕をこの地に普及させたいという動きがあり、家畜に興味を持っている人が少なからずいるように感じていた。
      そのような筆者の希望のもと、今回、訪問に当たってムピジ隊員に声をかけたところ 8 人が集まってくれて、街で一番オシャレなカフェで話をすることができた。家畜衛生や畜産の知識が全くない状態で調査に加わるのも大変であるため、まずはウガンダにおいて問題になっている病気一般についてのセミナーを実施するということになった。対象とする動物は牛、山羊、鶏、豚であり、午前中は講義、午後は動物の扱い方や血液検査などの実習を行うという内容で、9 月に 2 日間実施する予定である。
      その後でウガンダ人獣医師と調査をきっかけにして現場をまわることにより、ウガンダではどのように家畜を飼育しているのか、農家は何を望んでいるのか等を体験してもらい、今後の彼らの活動に役立ててもらえたら幸いである。

ホームページ・トップへ戻る。

2007 年 8 月 23 日 長期専門家 柏崎 佳人 記