カンボジアにおける牛住血吸虫症の中間宿主に関する調査
ーータイ人専門家 Dr. ノッポンによる技術指導、その2ーー
      さて中間宿主となる巻き貝の調査である。どんな種類の貝がどのくらい、どこにいるのかなどを調べ、採取した貝は研究所へ持ち帰り、動物への感染期幼虫であるセルカリアの有無を調べる。
      プノンペン市郊外の2地区 (Kien Svay と Sa Ang) を選び、水田や灌漑用の池で貝の採取を行った。プノンペンには人に感染する住血吸虫はいない事がわかっていながらも、レプトスピラ病のように水系感染する病気もあるので、裸足で水に入ることがためらわれる(研究所のスタッフは気にもとめていなかった)。
 
中間宿主となる巻き貝を採取したプノンペン近郊の2地区
 
Sa Ang 地区の人工池
 
Kien Svay 地区の水田
 
巻き貝を殺すハエ(March Fly: Sepedon sp.)が頭を下にして葉の裏に留まっている(黄色で囲んだ円の中心に見える、Sa Ang 地区)。
 
水田で水草に群れる巻き貝(Lymnaea acuminata)。
 
Sa Ang 地区の人工池において採集した貝の大きさとその数
 
Kien Svay 地区の水田において採集した貝の大きさとその数
 
光をあて、セルカリアの遊出を待つも、Sa Ang 地区の人工池で採取した巻き貝からは何も検出されなかった。
 
巻き貝(Lymnaea acuminata)からのセルカリアの検出
 
巻き貝(Indoplanorbis exustus
 
Kien Svay 地区の水田で採取した巻き貝(L. acuminata)から多くのセルカリアが検出された(白い小さな点がセルカリアである)。
 
巻き貝(L. acuminata)から遊出した長い尾を持つセルカリア。ネズミに寄生する住血吸虫(S. incognitum)かと推察される。PCR 法等による確認が必要。
 
巻き貝(I. exustus)から遊出したフォークのような
尾を持つセルカリア。恐らく S. spindale のセルカリアだと考えられる。PCR 法等による確認が必要。
 
体長が 1.5-2 cm の L. acuminata におけるセルカリア感染率は 8.6 % で、平均して貝1匹につき 24.8 匹のセルカリアが検出された。
 
体長が 0.5-1 および 1-1.5 cm の I. exustus におけるセルカリア感染率はそれぞれ 89.3 % と 96.4 % で、平均して貝1匹につき 2.6 匹と 3.6 匹のセルカリアが検出された。
いつもノホホンとしている Dr. ノッポンの1週間という短期間の活動にしては、濃い内容であったようだ。当プロジェクトの活動からいつも蚊帳の外へおかれがちな寄生虫研究室員が、このような野外での採材を含む指導が受けられたことは、技術の修得のみならず非常に良い刺激になったことであろう。色々と発展性のある研究内容でもある。カンボジアの研究所ではガソリンを買う予算がないなどという切羽詰まったお国事情もあるが、これからも彼らだけで続けていけるよう、サポートしていかなければならない。(20058月 プロジェクト長期専門家 柏崎 佳人 記)
"2005 年度活動"トップに戻る カンボジア"活動記・他"トップへ戻る