カンボジアの家畜飼育
ー坂井田協力隊員の報告書第四号から (2006 年 1 月記)ー
1. 牛、水牛
牛の販売価格(成牛)はよい牛なら300$以上、最低でも200$以上で販売できる。輸入牛の血が入っていて、大きな牛なら1000$以上になるという。タイから大きな雄牛を輸入すれば、8,000-10,000$位(カンダール州にいるらしい。耳が長い、白い牛だと言うので、アメリカンブラーマン種?)。ヨーロッパやアメリカなどから輸入する人はいない。
白くて大きい牛(カンダール州キエンスヴァイ)
肩峰にコブのある牛(カンポット州)
カンボジアの牛の繁殖は本交・・人工授精や胚移植などではなく、実際に雄と雌が交尾をすること・・で行われており、繁殖適期の雌を雄牛のところへ連れて行ったり、雄牛に来てもらったりして交配する(繁殖用の雄牛を飼っている人は道端に看板を出している)。このため、交配代は雄側がお金をもらえる。交配代は地区や牛によって違うと思うが、今まで聞いたことがあるのは、1回当たり、1$、5,000リエル、10,000リエル、10$近く・・など。大きな雄牛を持っていれば、それだけお金も多く取れる。タイからの輸入牛なら、1回の交配で100$取れる。そんなに大きな雄と小さなカンボジアの雌牛を交配できるのか?大きな子牛が小さい母牛から正常に生まれてくることが出来るのか?・・と聞いたところ、雌も大きいのを選ぶとのこと。生まれた子牛は大きく育つので、役牛として役に立つ。
カンボジア人が“コー・カンプチア(=カンボジア牛)”と呼ぶ、カンボジアで一番一般的な牛(カンポット州)
「コー・バー(雄牛います)」の看板。ここにお願いして、雄牛を連れてきてもらったり、雌牛を連れて行ったりして交配する。(カンダール州)
ほとんどの農家が数頭の牛を、田を耕したり、荷物を運んだりする、役牛として飼育している。農家によっては繁殖用の雌牛は農耕用には使わずに大事にしている。牛の数が余ったり、年をとって働けなくなったり、子供が生めなくなったり、また、お金が必要になれば肉として市場に出荷する。最近プノンペン郊外を中心に、数十頭単位で牛を肥育して市場に出荷するなど、役牛以外の目的を主体に牛を飼う農家さんも現れている。
子供が紐一本で牛を連れて、草を食べさせに行く。カンボジアでよく見る光景。(カンダール州)
昼間ずっと草を食べて、家に帰ってきたところ。国道7号線を北上していくと、この写真の左手の方に見える、小さくてチョコレート色をした色の濃い牛の割合が増えていくのがよく分かる。(クラチェ州)

1年のうち、7−9月は草が豊富にあるので家の近くや田んぼのあぜで草を食べさせる。1月は稲刈りの季節で、買った稲を運ぶ仕事がある。その他の季節は山の方まで連れて行って草を食べさせる。人がすぐそばに住んでいるような場所では、牛を子供が見張っていなければいけないが、遠くの山へ離してそのままほっておく場合は、人は見ていなくても盗られる心配はない。その場合は自由に交配している。

高床式の床の下で牛を飼っている農家(カンダール州キエンスヴァイ)
タケオ州の国立牛繁殖センター・プノンタマウから購入したばかりという大型の牛(クラチェ州)
水牛は水辺がなければ飼えないので、普通の牛を飼っている人のほうが多い。水牛は肉としての価値がないという話も聞いたことがあるが、普通に市場で売っているとのこと(ただし私がプノンペンの市場で聞いてまわって、いまだかつて水牛の肉は置いてあったことがない)。ただし普通の牛の肉の方が柔らかくて脂肪分があるので、一般には好まれるとのこと。
水牛は水浴びが必要なので水辺で飼われている。水に浸かってしまって普通の牛が飼えない地域で多く飼われている。(シェムリアップ州)
地面に立っている短い棒が、家で牛をつないでおくところ。この家では雨をよける屋根はなかった。(クラチェ州)
酪農はほとんどなし。データでは年間数1000tの牛乳を生産しているらしい(?)。牛乳、乳製品はほぼ100%輸入品(都市部以外ではこれらを口にする習慣もない)。カンダール州ではホルスタインを輸入して酪農を試みている人もいるらしい。山羊肉を食べる習慣があるので、山羊は郊外での多数飼育もみられる。
ホルスタイン種の入った牛。牛乳を取ろうと1ヶ月ほど前にタイから購入したという。(カンダール州キエンスヴァイ)
山羊の飼育場。ここは韓国人が経営している。(カンダール州)

餌は草を自由に食べる他、稲刈り後の稲わらを積み上げて乾かしたもの、とうもろこしの茎、木の芽、バナナの木の皮など。わらを草に入れて水をかけ、7−10日程度発酵(?)させるなど、手間暇かけて餌を作っている農家も見られた。

稲わらをつめて水をかけ、7−10日間発酵させるというための箱。餌袋でかこって密閉してある。見たときには稲わらは入っていなかった。(クラチェ州)
乾季に稲わらを積んで作ったえさ。(カンダール州キエンスヴァイ)
青草を刈り取ってきてあげることも。(カンダール州キエンスヴァイ)
牛用のえさ箱(クラチェ州)
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