マレイシアータイ国境付近の状況(コタバル、マレイシア)

マレーシアは周辺国とは異なり診断体制がかなり充実してきているが、タイ及び周辺国が一致して家畜疾病問題に取り組むにあたり、同国のスタッフがタイでの研修を受講することは、タイ及び周辺国の連携、診断技術の共通化、平準化に貢献するところが大きい。今回は、マレイシアにおける口蹄疫診断の主要なセンターであるコタバルに坂本短期専門家が派遣され、センタースタッフへの技術移転を実施した。主要なカウンターパートは口蹄疫セクションの中心的役割を担う Dr. Syarifa で、タイでの研修を終えてちょうど帰国したばかりであった。

国境沿いの畜産物流通の動向
コタバル家畜繋留所(仮名Entry point by Land)を訪問し、タイ国境沿いの畜産物の流通についての情報を得た。繋留所にはタイから密輸された肉牛が20頭ほどおり、前産地は不明だが全頭雄牛であった。非合法での搬入牛ではあるが、適正な検査を終了すればマレーシアの家畜商、食肉業者に販売できるとのこと。この販売金額は国庫に入らず密輸業者に渡されるが、密輸の罰金は科せられる。タイの肉牛価格と比べるとマレーシアの価格は高い。特に年末年始にはイスラム関係の祭事が多いため、特にこの時期はタイからの肉牛の移動が多いという。
コタバル家畜繋留所。肉牛は全頭雄牛で100-300kg前後、毎日の飼料、水給与は輸入業者の仕事。
家畜品種別の検疫期間
Species of animals Purpose of import Length of Quarantine period
Dogs and cats
from non-scheduled countries
Any purpose 7-30 days
Horses from scheduled countries Any purpose 14 days
Cattle, buffaloes, goats, sheep and pigs
(all countries)
Breeding 30 days
Slaughter 10 days
Birds (all species/all countries) Any purpose 10-30 days
家畜品種別の検疫料金
Species of animals Quarantine fees
Dogas - large/small sizes RM 4.00/3.00 per day
Cats - all sizes RM 3.00 per day
Horses RM 10.00 per day
Cattle/buffaloes RM 4.00 per day
Sheep/goats RM 1.00 per day
Quarantine certificate RM 2.00 per day
特定食料品の価格監視
      この年末年始期間には祭りを祝って親戚などと会食を行うなど食料品の需要が高まるのため、これに乗じて不正に価格を引き上げる業者が出るおそれがある。それゆえ同国の国内取引・消費者省は1946年物価統制法に基づいて特定食糧品の価格の監視を行っており、違反に対しては罰則がある。価格の監視対象となる品目は、鶏肉、牛肉、羊肉、卵などの畜産物のほか、魚や野菜などであり、今回、水産物のエビなどが追加され、昨年の17品目から23品目に増加した。例えば、インド産輸入水牛肉の価格は、首都のクアラルンプールでは1キログラム当り7.5リンギット(233円:1リンギット=31円)であるのに対して、国産骨付き牛肉が17リンギット(527円)から18リンギット(558円)へ、輸入骨なし羊肉が15リンギット(465円)が16リンギット(496円)に上昇している。
      中国系の人々が好む豚肉は監視の対象から除外されているが、このことについて、同国はイスラム教を国教としており、豚肉が忌避の対象になっているためと考えられている。豚の生産者販売価格は、昨年9月に生体100キログラム当り477リンギット(14,787円)だったが、その後上昇を続け、今年の7月と8月には600リンギット(18,600円)にまで上昇した。
      このため、主要生産地であるペラ州とマラッカ州の一部有力流通業者は、原料豚の買い入れを2〜3日間中止したとされている。その後、全国ベースで生産者側と流通業者側の取引価格に関しての交渉が持たれ、9月以降の生産者価格は570リンギット(17,670円)台で推移している。それでも昨年9月からの上昇率は約2割となっている。
マレーシアとタイ国境沿いの監視体制
タイ側のマレー系の子供たち。子供たちは自由に川を行き来している。
タイ国籍の叔父や叔母が物資を自由に移動させている。
      川幅40〜80メーターが国の境になっており、タイ側にもマレー人が住んでいる。子供たちは川沿いで水浴びをしており、マレーシア側にもタイ側にも親戚がいるという。また二重国籍を持っている人も多く、国が違うという感覚がない。このような地域での物資の流通は勿論税関を通じて取引するわけでない。家畜の場合は動物検疫の監視が強化されて、1〜2キロメーター間隔で監視小屋が川沿いにあった。現在はタイ南部は大雨が降り川の水は増水しており、密輸の可能性は低いと言う。しかし、乾季になると川幅が狭くなり、自由に人々や家畜が移動する。
      またこのところのタイ南部における治安の悪化が影響して病気のコントロールが難しい状況になっており、それを反映してこれまで清浄を保ってきたマレイシア側で口蹄疫の発生が続いているという話である。
(200512月 プロジェクト調整員 遠藤 清美 記)
河川敷の水牛たち(国籍不明?)。
道路を占領する所有者不明牛。

不法国境パスは10万MRの罰金。鶏、鴨等の不法国境越え禁止の立て看板。

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