Queen Elizabeth National ParkPart 1 (詳細な地図を見る)

      いつも短期隊員が来ると野生動物を見にどこかの国立公園へ出かけていた。さて今回はどこにしようかと選ぶにあたり、結局は筆者がまだ行ったことがないというきわめて個人的な理由でクイーン・エリザベスへ行くことにしてしまった。ここはウガンダで最も古くそれゆえ最もポピュラーな国立公園である。イギリスのエリザベス女王が訪れたのを記念して国立公園として整備されたのだと聞いた。
      この動物保護区の広さはは1,978平方キロ、旧ルウェンゾリ国立公園の一部でもある。アルバタイン地溝帯により降雨から遮断されたウガンダで2番目に大きいこの公園には、広大なサバンナと共に、ルウェンゾリ山系の氷河を水源とした、ジョージ湖、カジンガ運河、エドワード湖からなる湿原系があり、多くの水鳥が生息している。南部にはマラマガンボ森林やキャンブラ渓谷があり、大型動物以外にも霊長類や多くの野鳥を楽しむことができる。
      公園には、606種の鳥類、10種の霊長類、20種の捕食動物、95種の哺乳類が生息している。代表的な哺乳類はゾウ、ライオン、レオパード、ハイエナ、バッファロー、ウォーターバック、ウガンダ・コブ、イボイノシシなどである。

3 月 20 日 (土)
      天気に恵まれたこの日、獣医短期隊員である平野さん、千葉君に加え、彼らの同期隊員である牧本さんとシニア・ボランティアの前原さんとともにまずは古山君の待つキルフラへと向かった。平野さん、千葉君は昨日任期での活動を終え、既にカンパラへ上がって来ていたのであったが、古山君の任地であるキルフラはさほどクイーン・エリザベスから遠くはないため、迎えに行く手間を省くために任地で待ってもらっていた。いつも通りマサカ、ヤントンデを通って昼過ぎにはキルフラのカゾ獣医センターに到着した。
      ここで医療機器整備が専門であるシニアボランティアの前原さんに正常に作動しないインキュベーターをチェックしてもらった。するとインバーターの出力電圧が 160 ボルトしかないことが判明。インバーターの表示には 出力 220 ボルトとあるため 60 ボルトも低いことになる。前原さんによるとやはり原因はこの電圧の低さにあり、インキュベーターはエンテベのラボで検査した時に正常に作動していたのであるから、特に問題はないだろうとのことであった。インバーターには内部に出力の調整スイッチがついている場合があるので、もしかしたら修復できる可能もあるらしいが、当日は何の準備もしていなかったため、また次の機会を待つことにした。それにしても遊びに出かけるというのに、よく電圧計などを持ち合わせていたものだ。さすが機材整備のプロである。

Queen Elizabeth National Park (カセセ・ロードからの眺め)

Katungulu Gate

       カゾ獣医センターで用意しておいてもらった昼食をみんなでご馳走になり、古山君の荷物を積み込み、一路クイーン・エリザベス国立公園へと出発した。まず、西方のイバンダという町へ向かい、そこから南下してムバララへ、町の手前で右折して、更に西へ向かうルートだ。途中ブシェニ県を通り真っ直ぐに進んで行くとカセセ・ロードにぶつかる。そこをカセセ方向へ右折して北上し国立公園へと向かって行った。途中沢山の茶畑が広がっており、とてもアフリカとは思えないような景色が目を楽しませてくれた。ここら辺りは紅茶の一大産地になっていると聞いていたが、こんなによく整備され、広域に渡り、また景色として美しいとは予想だにしていなかった。そして更に進んで行くと、眼下に平原を望む高台に出た。その平原がクイーン・エリザベス国立公園のカジンガ平原である。
       平原へ下り、更に進んで行くとカジンガ運河にかかる橋を渡る、渡ってすぐに左へ折れると公園のカトゥングル・ゲートに到着した。ここで入園料 (ビジター: 20 ドル/日、レジデント: 30 ドル/日) を支払い国立公園内に入った。ゲートの手前にはウォーターバックが、入ってすぐのところにはゾウがおり、否が応でも期待が膨らむ。しかしチャンネルトラックという運河沿いのゲーム・トラックを走って行くもほとんど動物が姿を見せず膨らんだ期待はすぐにしぼんでしまった。結局、今日の宿であるムウェヤ・ロッジに着くまでイボイノシシとウォーターバックくらいしか見ることができず、「何か地味な国立公園だなあ」というのが筆者の正直な第一印象であった。しかしムウェヤ・ロッジはカジンガ運河を見下ろす高台に建っているため眺めが素晴らしく、それがせめてもの救いであった。この日、夕方にもホテルの近くをサファリに出かけたのであるが、やっぱりほとんど動物を見ることができず、明日からいったいどうなるんだとかなり不安になった。

North Kazinga Plains
雨で轍が濡れている。

African Buffalo

Uganda Kob

3 月 21 日 (日)
      ゲームサファリへ出かけるために 朝 6 時に起床。あいにくの雨降りだ。昨日、ほとんど動物が見られなかったことから危機感を覚え、今日はガイドを頼んでいた。ロッジでサービスのコーヒーとマフィンで少し腹ごしらえをした後、ガイドのエディーとともに出発した。雨の中をまずメイン・ゲートであるカバトレへ向かう。ゲートを出て右折し、しばらく走ると左手にニャムヌカ湖が見えてきた。この湖はこのあたりのアルバタイン地溝帯形成時に作られた数あるクレーター・レイクの中のひとつである。湖を過ぎて高台に上がると、フロントガラスにカジンガ平原の雄大な景色が広がった。雨はまだ止んでいなかったが、それでも辺りは徐々に明るさを増してきている。雨で濡れた道が朝日に光って平原を貫きなかなか味のある景色を作っている。雨も悪くないものだ。
       我々はエディーの案内でそのまま真っ直ぐに突き進み、昨日通ってきたカセセ・ロードを超えてジョージ湖側の平原へと入って行った。すると驚くことに次から次へと動物が現れてきた。まずはバッファロー、そしてブッシュバック、ウガンダ・コブなど、数も多い。そうか、カセセ・ロードの西側と東側では動物の密度が違うのだ。昨日はロッジのある西側を回ったので、なかなかお目にかかれなかったのだろう。

Hooded Vulture ハゲワシ

Lion Pride

Lake Bunyumpaka

Lake Bunyumpaka にてペリカンとフラミンゴを観察する。

発信器をつけられたライオン

ライオンの親子

      エディーは我々にライオンを見せようと、まずはトラック左側の平原へ入り込み、informal track を進み始めた。次に右側の平原に移り同じくinformal track を回る。頻繁に携帯で他のガイドと連絡を取り、情報を集める。しかしなかなかライオンは姿を現さない。そのうちに一羽のハゲタカが目にとまった。よく肉食獣の食べ残しを狙って集まってくるという。近くにライオンがいるのではないかとエディーが車を停め、双眼鏡で辺りの様子をうかがうとそこには別のサファリカーが停まっており、左手の草原に雌ライオンの姿が数頭見えた。やった、ライオンだ。ウガンダに来てから初めて見る肉食獣である。エディーによればこのプライド (ライオンの群れのことをプライドと言う) に雄はいないらしい。
      しばらく写真を撮った後我々はブニュンパカ湖へ向かった。ここの湖は塩湖であり、湖岸近くが四角く畦で囲ってある。この一つ一つがこの辺りに住む住民に割り当てられており、住民はそこで塩を採りそれを売って収入にしているのだそうだ。この湖にはフラミンゴとペリカンがいたが、肉眼では判別が難しかった。この後、我々は再びさっきライオンを見た場所へ戻った。さっきいたサファリカーは既に立ち去ったようである。するとエディーは辺りに他の車がいないことを確かめてから、我々の車を草原の中のライオンの近くへと滑らせて行った。これはきっと僕らが近くで写真を撮りたいだろうとエディーが気遣ったのだろう。確かにライオンにつけられた発信器や子ライオンが餌を食べているところなどをつぶさに観察することができた。そして最後には餌を食べていたライオンの親子に向かって車を走らせて行った。これでもちろん食事は中断され、子ライオンの中の一頭が餌を加えて場所を移動したので、何を食べていたのかもよく見えた。しかしこれはちょっとやり過ぎだろうという感じもした。これはやはりルール違反だそうで、見つかると罰金 150ドルらしい。エディーはしきりと誰にも言うなよと我々に釘を刺していた。
      ライオンを見て満足し、そろそろロッジへ戻って朝食を食べようと戻る途上、まずゾウの群れに遭遇し次にレパード・トラックでレパードを見ることができた。ちょうどレパードの調査に訪れていた動物学者の車がいて、僕らに場所を譲ってくれたのだ。というわけで3 時間余りの間にライオン、ゾウ、レパードとクイーンの人気動物 3 種を拝むことができたわけで、やっぱりガイドのエディーを頼んだのは大正解だったようである。
      そうえば大学時代の同級生にケニア山近くにあるイギリス人経営の大牧場でレパードの調査をしていた女性がいた。もう随分と昔の話であるが、結局その牧場主の息子と結婚して今でもケニアに住んでいるはずだ。何故レパードを選んだのか聞いたことはなかったが、野生のレパードを目にしてその理由が少しわかったような気がした。とにかくきれいなのだ。その毛皮の豹柄も歩く姿も本当に優美であった。---> その 2 に続く。

Lion の親子

餌 (Uganda Kob の子供か?)を運ぶライオンの子供

Elephant

Nile Monitor Lizard

Leopard

Leopard

Black-winged Red Bishop

Kazinga Channel

その 2 を読む。

2009 年 5 月 長期専門家 柏崎 佳人 記