1. 実施機関:RARDA (Rwanda Animal Resource Development Authority)-JICA 調査団合同チーム 2. 実施期間:2006 年 6 月から 2008 年 12 月まで 3. 目的および上位政策との整合性:モデル農家の生計向上、厩肥施用による土壌改良および乳摂取による栄養改善。ルワンダの国策である One Cow One Poor Family Project に沿って実施。 4. 対象地域およびモデル農家:ブゲセラ郡ンタラマ・セクター内の 3 セル、18 モデル農家。モデル農家は飼料畑および牛舎の有無を基準にセル事務所が選定。 5. 配布乳牛:75 % 交雑の改良妊娠牛 6. プロジェクト実施スケジュール:2006 年 12 月の導入を前に、技術研修、スタディー・ツアー、牛舎の建設、天水貯水槽の設置などを進めた。牛舎用コンクリートおよび貯水槽は開発調査チームにて供与。 7. 改良乳牛購入および選定:RARDA の獣医師および家畜衛生技師、購入業者、JICA 調査チームで、ニャガタレ州の牧場から視覚判定により選定し、血液検査を経て RARDA が最終的に決定した。 8. 飼養状態: - 繁殖は人工授精および種牛による自然交配の 2 面から実施 - 泌乳量:2.5~8.0 リットル/日 - 出産累計頭数:雄 9 頭 (うち 3 頭死亡)、雌 5 頭、流産 2 頭、母牛とともに売却 1 頭 ---> 計 17 頭 - 給餌方法:粗飼料が主体 (ネピアグラス、サツマイモの茎葉、野草、等で、豆科牧草はごく一部) - 飼養法:舎飼いのゼロ・グレージング 9. 課題・問題点: i) 低泌乳量 ii) ネピアグラスに偏重した給餌飼料 iii) 家畜衛生を含む RARDA および地方政府機関の脆弱な支援体制 iv) 視覚に頼る改良乳牛選定 v) 非常に低い人工授精成功率 (25 %)
ざっと以上のような説明を聞いてまず最初に気になったのは、導入した牛は 75 % の交雑というだけで、特に改良されたわけでも何でもないという点だ。乳牛の場合、純血種であっても当然乳量には個体差がある。だから高能力牛の子孫を残そうと農家は苦労を重ねていく。精液を提供する雄牛の場合などは、後代検定といってその子孫の能力から雄牛の価値を判定したりするくらいだ。ところが RARDA-JICA 調査団合同チームの方々は、75 % の交雑種であれば、どれもローカル種より泌乳量が多いはずだと思いこんでおられたのだろう。本来であれば、少なくとも泌乳能力の高い母牛から生まれた子供か、評価の高い雄牛の精液を使った人工授精により生まれた子供を選ぶべきであったのだ。つまり最初からつまづいてしまったわけである。泌乳量が少ないというのも仕方がない。 しかし、ウガンダの交雑種乳牛などでも日量 2 リットル程度の牛がざらにいる。2.5~8.0 リットル/日というのはさほど悪くない数字である。最初の期待が大きかっただけに (15 リットルくらいは搾れるとと考えていたらしい)、とてつもなく少なく思えるのだろう。それにしても家畜衛生などのサポート体制がないままに、経験のない農家に乳牛を配るというのは無謀としか言いようがない。乳牛は家畜の中でも高度な飼養技術が必要とされる動物だ。国策として決まり、動き出してしまったためにもう後戻りはできないのか。弱い立場の農家にそのしわ寄せがきていなければよいのだが、、、という気持ちを胸に、我々はブゲセラ郡へと向かった。
農家 1:改良乳牛導入プロジェクトのモデル農家 JICA チームから供与された牛は 2 月に出産。当時は日量 8 リットル出していたが、現在では 5 リットルまでに低下した。その後、農家が自分でもう一頭未経産牛を購入した (約 8 万円)。現在、妊娠 3 ヶ月。乳価は 1 リットル 30 円程度。 牛の状態は悪くない。体格は小さめだが、痩せてはいないし毛艶も良い。乾期に入り、農家は毎日往復 2 時間かけて水を取りに行くという。1 頭が日に約 40 リットルくらいの水を必要とする乳牛を、こんなに水源から離れたところで飼育すること自体、無謀としか言いようがない。しかし聞いたところによれば、だいたいどこの農家も同じような状況なのだという。牛小屋が狭いのが若干気になった。RARDA-JICA チームで設計し、床のセメントなどはプロジェクトから供与して農家が建てたらしいが、もう少し広い方が良かっただろうと感じた。
農家 2:パイナップルの栽培 8 ヶ月程度で収穫できる。1 個約 60 円。コーヒーも植え始めた。
農家 3:食用バナナの栽培 昨年 9 月に植え付け。収穫までに約 1 年かかる。
農家 4:ウサギの飼育 昨年 11 月にひとつがいをプロジェクトが供与し、それが現在では 34 羽にまで増えた。1 羽約 160 円から 200 円。しかしルワンダではウサギを食べるという習慣が一般的ではないため、マーケットが確立されていない。
農家 5:改良乳牛導入プロジェクトのモデル農家 昨年 12 月に仔牛が生まれた。泌乳量は最高で 4 リットル/日程度。自然交配をし、現在妊娠 3 ヶ月。ここでも牛の状態は悪くない。背部の皮膚に 2-3 ヶ所、丸い湿疹痕のような瘡蓋があり、農家はランピースキン病ではないかと心配していたが、筆者の目にはランピースキン病の病変には見えなかった。
農家 6:養蜂 女王蜂を取ってくることにより、野生のハチを集める。季節により色や味が違うため、品質が一定しない。この時期、ハチが蜜を集めるのは主にユーカリの花から。