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プロジェクト・サイト
畜産に関する行政組織は畜水産省の下に家畜改良獣医局(LBVD)、及び畜産公社(LFME)が置かれ、LBVDは、1. 畜産開発及び動物衛生に関する普及事業、2. 検疫等の証明業務、3. 家畜遺伝資源の保存、畜産開発、調査研究、及び研修を担当している。
生物製剤部Biologics Production Division
    
口蹄疫部と細菌性、ウイルス性ワクチン製造部に分かれる。最近、ブルセラ・ワクチンおよび抗原製造部を新設した。また北部に支所を持ち、更に2カ所の新設を進めている。
    口蹄疫部は診断とワクチン製造の2課で構成されており、職員の多くは40才を超えている。施設はL字型平屋建てで老朽化が著しく、豪雨の時には所々で雨漏りがする。ウイルス飛散防止のための空調施設はない。診断課に持ち込まれる材料は年間50〜100検体で、ELISAにより型通りの診断(タイピング)が行われている。しかしELISAの精度を高める上で必要なウイルス分離は資機材の不足から行われていない。ワクチン製造課にはFAOが供与した浮遊培養によるワクチン製造用機材、IAEAが供与したボトルローラーが設置されているが、FAOが供与した浮遊培養装置については機械的な問題を多く抱えていること、またIAEAが供与した機材は頻繁に発生する停電によって使用することができないため、放置されたままになっている。そのため、静置培養によってワクチン製造用ウイルス液が調整されている。抗原量の測定はもちえろんのこと、ウイルス液の細胞片除去も行うことなくワクチンが製造されている。動物を用いた検定が行われていないため、効果、副作用については不明である。年間約10万ドースを生産している。
    ワクチン製造部では、豚コレラワクチンをはじめ8疾病10種類のワクチンと、白痢診断液(急速凝集反応用抗原)の製造を続けている。ワクチンの製造量は、畜産獣医局が前年の発生報告を基に必要量を算定し決めている。オートクレーブをはじめ大半の機材は日本からの供与によるもので、老朽化はしているが慎重な管理の下に大切に使用されている。しかし最近になって耐用限界に達した機材が増加し、凍結乾燥機、蒸留水採取装置は更新されている。豚コレラワクチンをはじめとして、製造指導を受けたワクチンは当時と全く同じ方法で製造されている。品質についても問題は生じていない。
    ブルセラ・ワクチンおよび抗原製造部は、当プロジェクトのタイにおける研修を受けたスタッフが帰国後、新たに設置された部署である。政府の財政難にもかかわらず機材を買いそろえ、タイよりシード株の分与を受け、間もなく生産体制に入るところである。このようにミャンマーでは移転された技術を有効に活用しようという意欲がスタッフにも政府にもあり、周辺4カ国の中では財政的に最も厳しい国でありながら、特に生物製剤部は拡充を続けている。
        

口蹄疫部


ブルセラ・ワクチンおよび抗原製造部
家畜疾病診断部Disease Diagnosis & Control Division

    疾病診断部は、中央病性鑑定センター、3カ所の地域診断センター(マンダレー、パセイン、タンジイ)、動物検疫所、アッセイ・ラボ(生物製剤の検定ラボ)、疫学課を含む。
    中央病性鑑定センターは、家畜疾病の発生を迅速に把握し、的確な防除対策を講じることを目的としている。国家公務員を希望する学生が少ないことも手伝い、職員の多くは40才を越えている。検査材料は地域獣医事務所を通して送付されたものが主体であるが、地域診断センターが診断し得ない検査対象も送られてくる。近年は(1997年以降)動物検疫所の検査業務も担当し、年間検査実施頭羽数は4〜6万検体に達している。しかし多くは血清及び寄生虫の検査で、ウイルス検査は全体の1〜2%と極端に少ない。
中央病性鑑定センター
    機材のみならず診断用抗血清等が著しく不足しており、病理組織診断を加えた総合診断をなされることが多い。日本をはじめ先進国で一般的にみられるロタウイルス病、豚丹毒、大腸菌症、胸膜肺炎等の発生がみられないことは検査体制の不備によるもので、報告されている17疾病は「診断ができた疾病」として扱うことが適当であろう。
    病性鑑定センターに対する政府配分予算は極めて少なく、ここ数年は100米ドル(年間予算)に満たない。ミャンマー政府は1997年度から商業的規模(大規模経営)の農場からの検査料金を有料としているが、それによる収入は限られている。そのため資機材の多くはJICAプロジェクト(ミャンマー国立家畜衛生センター機材整備計画、1985〜1987年)によって供与されたもので、ミャンマー予算で供与された機材は皆無と言って良い。
    病性鑑定センターの獣医師職員の多くは先のJICAプロジェクトの専門家の指導を受けており、国際獣疫事務局(OIE)が標準法と定めている疾病診断法の実践に必要な基礎知識を、十分とまではいかないが有している。志気も高い。国民1人あたりのGDPがカンボジア、ラオスよりも低く、電力供給等にも問題を抱えているため自力による業務遂行は望めないが、重要資機材の供与、修理がなされると、活動を一気に高めるものと思われる。

ミャンマー関係機関組織図