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1. 地理並びに自然環境
    インドシナ半島東側の細長いS字型の国−−ベトナムは、豊かでバラエティーに富んだ自然を有している。山岳地帯、美しい海岸線を持つビーチ、肥沃なメコンデルタなど、観光ポイントとして開発されている所も数多くある。北部のハロン湾、中部のチャンパ遺跡のあるミ−ソン、古い街並みが残るホイアンは世界遺産に登録されている。
    ベトナムは全体として高温多雨、年間平均気温は22℃以上という熱帯モンスーン気候に属している。が、南北に細長い国土のため、南部と北部で大きく異なる。さらに、中部、山岳部、海岸部位と分けられる。同じ12月でも南部のホ−チミン市はTシャツで過ごせるが、北部のハノイではセーターが必要となる。さらに北部の山間部では雪が降ることもある。近年の異常気象で2〜3年に1度、南部から中部にかけて大雨による大洪水が起こる。
2. 内 政
    86年の第6回党大会にて採択された市場経済システムの導入と対外開放化を柱としたドイモイ(刷新)路線を継続、外資導入に向けた構造改革や国際競争力強化に取り組んでいる。他方、ドイモイの進展の裏で、貧富の差の拡大、汚職の蔓廷、官僚主義の弊害などのマイナス面も顕在化している。
    2001年4月には、第9回共産党大会が開催され、共産党一党支配による社会主義体制の維持とドイモイ路線継続という基本方針の継承が打ち出されるとともに、党員の腐敗撲滅に向けての各種対策が示された。また、同大会において、マイン国会議長が新書記長に選出された。2002年7月の第11期第1回国会では、ルオン国家主席、カイ首相がいずれも再任された(任期5年)。
3. 社会経済状況
    89年頃よりドイモイの成果が上がり始め、95〜96年には9%台の高い経済成長を続けた。しかし、97年に入り、成長率の鈍化等の傾向が表面化したのに加え、アジア経済危機の影響を受け、外国直接投資が急減し、また、輸出面でも周辺諸国との競争激化に晒され、99年の成長率は4.8%に低下した。
    2000年の成長率は6.7%、2001年は6.8%、2002年は7.0%、2003年は7.2%を記録し、2004年も7.6%(暫定値)の成長率を達成。しかし、慢性的貿易赤字、未成熟な投資環境等、懸念材料も依然残っている。
4. 畜産の課題
1) 家畜生産における低生産性
    過去10年間における家畜生産の伸び率は、食肉、牛乳、および鶏卵でそれぞれ5.7%、2.6%、6.8%と比較的高い数値を示している。しかしながら、生産量の増加は一農家当たりの飼育頭羽数の増加に負うところが多く、生産性の向上からきた部分は少ない。更なる飼育頭羽数の増加は、十分量の飼料確保に対する困難、環境問題への配慮等もあり、将来とも続けるのは難しくなってきている。従って、今後は家畜頭羽数の増加ではなく、家畜単位、農家単位の生産物の増加(生産性の向上)を図っていく必要がある。

2) 生産コストの上昇
    粗放的な庭先養豚、養鶏、牛、水牛飼育では、生産コストに対する配慮はほとんど必要がなかった。これは生産コストの大部分を占める餌代がほとんど無料だったからである。しかし、外部からの購入飼料を全く与えないこのような飼い方が、本当に生産コストが最も低い飼い方なのかどうか、一概には判断できない。
    また、商業的な中・大規模経営(畜産の専業化)が進むと、生産コストを下げるための最大の要因は餌代であり、バランスの取れた良質の飼料をいかに安定して、かつ低価格で確保するかが健全な経営の基礎となる。ベトナムの場合、飼料会社の発展は遅れており、国内で得られる飼料原料の開拓も進んでいない。配合飼料に対する品質基準、規定・法令の設置およびそれらの執行をはかる検査体制も、現状では無いに等しい。

3) 家畜育種・繁殖分野での遅れ
    1980年代後半から、すべての政府関連試験研究所に対して適応された独立採算政策の結果、すぐに収入の増加が見込めない育種・繁殖といった分野への投資はほとんど止まってしまった。このため家畜の育種改良事業の停滞が目立っている。特に豚、乳牛、鶏において、外来種と在来種の交配による、小規模農民用に最も適した交雑種の創出は早急に開始する必要がある。

4) 家畜衛生サービスの未整理、低投資
    地方家畜衛生サービス体制の不備により、農家レベルでの正確な衛生状態が中央レベルにまで上がってこない。地域レベルで働く家畜衛生担当者の待遇が十分でないため、本来の職務としての衛生サービス業務に専念できないスタッフが多い。また、一般小規模農民に対しての普及サービスが原則として有料となった結果、政府の行う家畜疾病コントロール対策(病気発生の届け出、強制ワクチネーション、家畜移動制限、等)に対して、家畜農民からの積極的な協力が期待できなくなった。

5) 市場・流通システムの不備
    市場・流通システムは将来の畜産発展のためには早急に整備されなければならない分野である。特に生体市場、屠畜場、食肉加工場、集乳所、貯乳冷却所、生乳加工場といった一連の施設が不足している。また、定期的(毎週一度)な地域ごとの生体家畜、畜産物価格情報の公開が必要である。

6) 普及サービス網の不備(特に小規模農民に対して)
    社会主義時代に存在した政府による無料の普及サービスは、今ではほとんど姿を消した。受益者負担の原則による普及サービスの民営化が押し進められているが、その進歩は遅い。現状では、小規模家畜飼育農家は普及サービスの恩恵に浴することはほとんど無い。

7) 関連試験研究の不備
    独立採算性の原則が続いており、試験研究所の運営は厳しい状態から抜けきれないでいる。研究費、運営費不足から、研究者、特に20ー30才代の将来を嘱望される若手が、研究者としての将来を断念するケースが目立っている。