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1. 病原体  高病原性鳥インフルエンザウイルス
              
学名:A型インフルエンザウイルス(Influenza A virus)

2. 生物学的特徴
    高病原性鳥インフルエンザとはオルソミクソウイルス科のインフルエンザウイルス感染による家きんの疾病のうち、鶏、七面鳥などに高致死性の病原性を示すウイルス感染による疾病をいい、わが国では家畜伝染病予防法の法定伝染病に指定し、国際獣医事務局(OIE)では高病原性鳥インフルエンザ(highly pathogenic avian influenza)としてリストA疾病にランクしている。現在までに本病を引き起こしたウイルスは全てA型インフルエンザウイルスのH5またはH7亜型に限定されている。1997 年に香港で発生した高病原性鳥インフルエンザウイルス感染による18人中6名死亡の症例以来、重要な人獣共通感染症と認識されている。
    
本病発生の鶏や七面鳥群では突然の死亡率の上昇があり,高い場合には100%に達する。臨床症状は肉冠・肉垂のチアノーゼ,出血,壊死(写真1),顔面の浮腫(写真2),脚部の皮下出血(写真3)、産卵低下又は停止,神経症状,下痢等であるが,甚急性死亡例ではこれらの病変が認められないことが多い。 2004 年分離ウイルス (H5N1) の接種鶏では、元気消失後、直ちに死亡し、明らかな肉眼病変は認められていない(写真4)。
    比較的軽度の場合は呼吸症状が主で、その外に元気食欲の低下、緑色の下痢便、産卵の低下がみられる。死亡率はさまざまで、極めて低い例から、70 %に達する例もある。


肉冠の出血・壊死(写真1)

顔面の浮腫性腫脹(写真2)

脚部皮下の出血(写真3)

甚急性死亡鶏、明らかな肉眼病変なし(写真4)
3. 診 断
    強度の例はニューカッスル病(ND)に類似した所見を示すので、ND との鑑別を必要とする場合がある。また、症状や病変は多様であるので、正確を期すにはウイルスの分離による。
    気管、肺、あるいは腸内容、糞便の乳剤を発育鶏卵(10日齢)の尿膜腔内へ接種する。3〜4日培養の後に、あるいはこの過程で死亡した卵の尿膜腔液について HA 活性を調べる。また乳剤を CK に接種すると CPE(感染細胞の円形化)を伴って増殖する。感染細胞に対して HAD(赤血球吸着試験)、あるいは培養液のHA活性を調べる。
    NDウイルスも HA 活性を示すので、それぞれの抗血清で AGP テストを行う。亜型の決定には各亜型の標準血清を用いるが、この血清は中央の研究機関に備蓄されている(日本では)。
4. 対 策
    発生があった場合、すべて淘汰し、消毒を徹底し、かつ人や器材の移動を制限し、2〜4週間経過してから新しい群を入れ、再感染防止に成功した例もある。

5. 被害発生
 わが国では1925 年の発生例から H7N7 のインフルエンザウイルスが分離されており、それ以降は発生がなかったが、2004 年1月山口県で鳥インフルエンザウイルス H5N1 亜型による発生が79 年ぶりに確認された。2月に大分県で愛玩鳥のチャボ、京都府の採卵鶏農場で同亜型による発生が確認された。ま た京都と大阪では死亡したカラスからも H5N1 亜型鳥インフルエンザウイルスが分離された。最近の世界での主な発生例としては、香港(1997 年、H5N1)、オーストラリア(1997 年、H7N4)、イタリア(1997 年、H5N2)およびイタリア(1999 年、H7N1)、オランダ(2003 年、H7N7)、韓国(2003 年、H5N1)などである。2004 年にH5N1亜型の感染がベトナム、タイ、カンボジア、中国、ラオス(H5亜型)、インドネシアなど東アジア各国に拡大しベトナムとタイではヒトの感染者と死者が発生した。同年パキスタンで H7、米国で H5N2 の発生も報告された。

(動物衛生研究所ホームページ、養賢堂「新版 家畜衛生ハンドブック」より転載)