ラオスでは 2004 年の初めにインフルエンザの発生が確認されたが、それ以降は発生していないしヒトの感染例もない。昨年7月より WHO がらみでアメリカの St. Jude Children's Research Hospital が調査を行ってきた。これまで約 6000 羽の鶏を検査してウイルスが全く分離されなかったというのだから、まあ発生がないというのは事実なのだろう。彼らはアメリカの学生を5週間交代というサイクルで継続派遣している。何故5週間かというと、「5週間ならば厳しい環境でも我慢すれば何とか耐えられるから」という理由だそうだ。何かラオス側のスタッフにとっては失礼な話だが、こんな所にもアメリカらしさが出ていると言えなくもない。
ラオスの家畜衛生センターでは 2004 年の鳥インフルエンザの発生後すぐに新しい鳥インフルエンザ・ユニットを立ち上げた。そこに当プロジェクトが供与した安全キャビネット(写真左)や孵卵器(写真左下)を据え付け、専属の獣医スタッフを2人配置した。所長も含め、センター全体で獣医が6名しかいないのに、そのうちの2名をこの小さなユニットに配したのだから、このセンターとしては大きな投入に違いない。それでも現在アメリカが行っている調査の仕事だけであっぷあっぷの状態であり、今後 FAO や EU が本格的にプロジェクトをスタートさせた場合、一体どう対応していくのか、ドナーによるカウンターパートの奪い合いが起こりそうだ。
ラオスではちょうど EU によるコミュニティー・ベースの畜産振興プロジェクト・フェーズ2が始まったところであり、この本部が家畜衛生センター内に置かれている。この他にも FAO がらみのプロジェクトが2つ。ひとつはアメリカによる「カンボジア、インドネシア、ラオス、および中国における鳥インフルエンザ発生に対するコミュニティー・ベースによる早期警戒・対策強化のための緊急支援」という長ったらしい名前の付いたプロジェクトである。期間は 13 ヶ月で、予算総額は約7億円だ。