Dr. ラダはベトナムで問題になっているウイルス性アヒル肝炎、ガンボロ病、狂犬病を中心に、BSEについてもその組織病変について実際の標本を使ってスタッフに説明した。技術的には封入体の染色法や一般的なHE染色時の注意点などについて指導し、実際に見やすくて美しい組織標本が作れるように改善された。またセンターの要望として今後、免疫組織染色を行いたいとのことであったため、今回はまず Dr. ラダがその理論、方法についてのセミナーを行い、今年12月頃を目処にもうひとりの専門家を派遣して技術的な指導を行うこととした。
Dr. ラダはタイ国立家畜衛生研究所創設当初からのベテランスタッフであり、明るく温厚でかつ親分肌的な性格から、当研究所でなくてはならない主要なスタッフのひとりである。ベトナムへ赴任しての感想は、「ここはスタッフが若くていいわねえ。タイの研究所なんか高齢化が進んじゃって、後10年したらどうなっちゃうのかしら。」だった。帰国後のコメントは、「ベトナムはのんびりしてて良かったわ。タイは忙しくてやんなっちゃう、、、だから報告書、もうちょっと待ってね。」タイ人専門家も日本人専門家と同じような感想を漏らすようになってしまった。
レプトスピラ病診断の Dr. ドアンジャイはタイよりレプトスピラ標準菌株に対する抗血清のパネルを持参し、現在センターにおいて継代している20種以上の標準細菌株をチェックしたところ、いくつかの株が正しく継代されていないことがわかった。センターにおいて維持している菌株のほとんどはキューバから購入したのであるが(さすが社会主義国)、それ自体が正しい標準株ではなかったのであろうと推察される。やはり診断の基準となる標準株は信頼のおける確かな機関から導入しないといけない。
他に蛍光抗体法によるレプトスピラ菌の検出や(FITCコンジュゲートはタイの研究所で作製したものを持参した)、野外材料からの分離法などの指導も行った。またレプトスピラ病一般についてのセミナーも開き、活発なディスカッションが行われた(写真下左)。
Dr. ドアンジャイもやはりタイの研究所ではベテランの部類に入るスタッフである。人形のように整った顔立ちをしており、若い頃は目も覚めるような美人であったろうと推察される(今でももちろん美人ではあるが)。入所当初からレプトスピラ一本で仕事をしており、当疾病ではタイにおける第一人者、現在は最近新設された人獣共通感染症ユニットのチーフとして活躍している。