マリを歩く ーー> ニジェール川 内陸デルタ編、その 1

ニジェール川が形成する内陸デルタ

ニジェール川が形成する内陸デルタ

12 月 29 日 (月) ジェニ
      7 時にホテルを出発。空気がひんやりして気持ちがいい。自分が町のどこら辺りにいるのか見当もつかなかったが、何人かに道を聞いて意外にあっさりと乗り合いタクシーのガラージにたどり着くことができた。ホテルからも遠くない。ガラージは人であふれている。どんなシステムになっているのだか見当もつかなかったが、いつもこういうところには人の世話を焼きたがるお節介者がいるもので、ここでも気の良さそうなおじさんが「チケットを買って乗客名簿に名前を書きなさい」と教えてくれた。客が集まり出発したのは 8 時過ぎ。ピックアップの荷台にコの字形にベンチを組んである。自分は角に座る羽目になり、両太ももを挟まれて身動きが全くとれない。なんと大人が 15 人プラス赤ん坊が 2 人も荷台に乗っていた。出発したと思ったらガソリンを入れ、モプティでは車長の 3 倍はありそうな鉄筋を折り曲げて載せたりと、時間ばかりが過ぎていく。ようやく走り始めたものの、とにかく足が痛くてひたすら我慢するのみ。フェリー乗り場に着いたときには 10 時半になっていた。我らのトラックはエンジンがかからず、押しがけをしている。しばらくフェリーの順番を待ち、乗り込む。向こう岸にはすぐに着いた。トラックはフェリーの上でも押しがけをしている。フェリーのはしけが岸まで届いておらず、サンダルを脱いで水の中を歩く羽目になった。太陽は暑いが水は冷たい。ジェネの町に着いたのは 11 時半近く、かれこれ 3 時間以上もかかったことになる。車を降りてから、ずっと隣に座っていた男の子が屋根のキャリアに載せていた筆者のカバンを気にかけてくれ、少しほんのりとしたいい気分になった。

ジェニの町へ入る手前でバニ川を渡るためフェリーを待つ。

バニ川のフェリー

      ガラージはあのグランド・モスク前広場の一角にあったので、すぐにあの威容が目に飛び込んできた。その日は週に一度のマーケット・デーであり、広場周辺は様々なものを売る人々でごった返している。強い日差しと、巻き上がる土埃と、むせかえるほどの人々の往来に圧倒され、あれほどこの目で見るのを楽しみにしていたモスクはさほど強い印象を持って迫ってはこなかった。とにかくマボが予約してくれたホテルへチェックインし、少し昼食でも食べながらゆっくりしようと、頭の中に刻み込んでおいた地図を頼りに歩き出す。しかし、この人混みをかき分けながら 500 メートルほどの距離を歩くのもなかなか骨が折れた。ホテルに着くとそこにはツーリストがウジャウジャいた。フロントの前がオープンな広いレストランになっているのだが、まだ 12 時前だというのにすべての席が埋まっている。食事をしているのではなく、ひととおり観光を終えたツーリストたちがドリンクを飲みながら休んでいるのだ。これでは昼食どころではない。すぐにチェックインを済ませてからビールを 1 本買い、部屋に入ってようやく一息ついた。

グランドモスク前の広場で毎週月曜に市が開かれる。

マンデイ・マーケットの雑踏

色鮮やかな野菜。名前を聞いたが何だかよくわからず。

この地方特有の帽子をかぶる青年

羊のマーケット

動物薬を売る店

      せっかくジェニに来たのにホテルの部屋でウダウダしているのももったいなく思い、午後、まだ日が高く一番暑い時間帯に外へ出た。炎天下、日陰もない路上で所狭しと物を売っている。歩くのもやっと。ホコリが舞い上がり咳き込む。1 時間くらいうろつき、暑さに耐えかねホテルへ戻った。もう 2 時過ぎだというのにレストランはまだ満杯で席がない。仕方なく買ってきたパンとビールで遅い昼食をとる。今日はまともな食事ができそうもない。それにしても、レストランでドリンクを売るカウンターにいる男の態度が悪く、ムカついた。
      4 時半頃から再び外へ写真を撮りに出かけた。日差しが和らぎいい感じだ。マーケットでは店じまいを始めており、トラックに荷物を積み込んでいる。町の北部へ延びる道には多くの人が行き交っていた。馬車が何台もいて、マーケット帰りの人たちが乗り込んでいく。女たちはカラフルな服を身にまとい、頭に荷物を、腰の上に赤ん坊をのせて歩いている。これから近隣の村へ帰る人たちだ。マーケットでは売っているものを見るのが面白かったが、マーケットの後片付けには人々の動きが加わり、被写体として興味が惹かれる。レストランで夕食を取るのはあきらめ、路上で揚げ魚と串焼き肉を買い、再びあの感じの悪い男からビールをゲットして部屋に戻った。

干し魚と燻製

ローカル産の石けん

マーケットが終わり、近隣の村へ帰る人々で賑わう。

馬車に売れ残った商品を積んで家路につく。

ニワトリは輸送時にいつも虐待される。

荷物をトラックに積み込み、帰途につく。

12 月 30 日 (火) ジェネ
      ジェネはかつて貿易で栄えた町であり、一時ティンブクトゥとその地位を競っていた。今日のジェネは農業と観光を主要産業としている。ニジェール川内陸デルタ内のひとつの島の上に町は広がり、約 1 万の人々が暮らしている。
      7 時過ぎにホテルを出て散策。やっぱり朝は気持ちがいい。バニ川沿いの景色が面白い。どこの国に行っても水辺での生活には活気があり、心が和む。9 時頃にはホテルへ戻り、初めてホテルのレストランで食事をした。月曜の晩にモプティからパリへの直行便があるらしく、ほとんどの客はその便で帰ったのだろう。今朝はツアー客がいなくてのんびりできる。

バニ川水系で食器を洗う。

野菜作りは手間をかけ丹念に行う。

マーケットのない平日のグランド・モスク東側

グランド・モスク北側入り口

水際で遊んでいた少年たち


川の水で食事の支度?


後列左端の男の子が持つわけのわからないおもちゃで遊んでいた子供たち。遊び方を見せてくれたがイマイチわからず。

乾燥させた泥のブロックをロバのカートで運ぶ少年。ロバをバックさせるのに苦労していた。

      昼から再び外出する。水辺沿いに反時計回りでジェネの町を半周した。相変わらずガキがたくさん寄ってきて、写真のモデルには事欠かない。ジェネの建築は正面のスタイルから 2 つの様式に分けられる。ひとつはトゥクロールと呼ばれ、もうひとつがモロッコ様式である。前者の家には入り口の上に人が乗られるほどの出っ張りがあり、一方、後者は窓にアラブ的な装飾がついていることが特徴である。 路地には排水溝が張り巡らされ、家庭から出る汚水はデルタの水辺へと流れ込む。路地の真ん中を排水が流れるというのはあまり褒められたシステムではないような気がするが、この程度の人口であればデルタに流れ込んだ汚水も自然の力で浄化されるのかもしれない。

渡し船

対岸には牛の群れが、、、

ジェニの町

動物も船で運ぶ

モロッコ式住宅の窓

モロッコ式住宅の窓


ジェニの町中、昼下がり

町中の路地を走る排水溝

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ドゴン | ニジェール・デルタ | ティンブクトゥ | Image Lab.


2009 年 2 月 長期専門家 柏崎 佳人 記
"マリ"のスライドショーをダウンロードする。(File Name: Mali.mov)