マリを歩く
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ティンブクトゥ+バマコ編、その 2
1 月 3 日 (土) ティンブクトゥ
ティンブクトゥにはすでに飽き、あまり出かける気はしなかったが、ホテルに籠もっているのも気が滅入るので 8 時半頃外に出て歩き始めた。すると、昨日の夕方、ホテルの近くで会った小学校高学年くらいの男の子が現れ、ついてきた。
"Hello, my name is ........ Nice to meet you."
程度の簡単な英語であったが、英語を話す子供自体が珍しかったので、「英語うまいねえ」と声をかけてすぐに自分はホテルに入ってしまった。英語を褒められてうれしかったのだろうか、その子がついてくる。今朝は英語で話しかけても
"Yes, yes."
としか返事をしないので、結局、挨拶程度しか話せないのだろう。単に一緒に歩きたいだけなのか? しかしずっとつきまとわれるのも鬱陶しい。しばらくそのままにさせておいたが離れる様子がないため、途中で「俺はひとりで歩きたいんだ」と、身振り手振りを交えてその子に伝えて別れた。その時の顔がすごく悲しげであり、したいようにさせておけば良かったかなと後悔することしきり。気になって仕方がなかった。
サンコーレ・モスク
礼拝に向かう男性
グラン・マーケット横で魚を売る女性たち
荷を運ぶ少年
昼下がりの町
砂漠から町を望む
午後は 3 時過ぎにホテルを出た。するとあの少年がまた寄ってきた。今度はついて来ようとはしなかったが、朝の罪悪感から「ついて来てもいいよ」と言ったところ一緒に歩きはじめた。特に会話ができるわけでもなかったが、自分が案内してもらうような格好になった。しかし行ったところは既に自分で歩き回ったところばかりだ。町中を歩き、グランドマーケットに入ってから砂漠へと出かけた。砂丘のある方まで行ってみることにした。こういうところを歩くのは慣れているのだろう、彼はスタスタと進んでいく。ここまで来ると、やっぱりティンブクトゥは砂漠を見に来るところなのだなあ、ということがよくわかる。
ホテルの近くまで戻ると、その子の同級生や友達 4-5 人が寄ってきて、「こいつにガイドしてもらっているのか?」と聞かれた。そこで初めて、この子はガイドをしているつもりなのか、ということに気がついた。ホテルに着き「おみやげをあげるからちょっと待ってて」と伝え、部屋に戻った。自分としては日本から持ってきていた和手ぬぐい 1 本をあげてお礼に代えるつもりだった。ところが手ぬぐいを見るとその子は急に不機嫌になり、そっぽを向いてその場からいなくなってしまった。やっぱり金が欲しかったのだ。その場に彼の友達も何人かいたので、子供ながらに面目をつぶされたという気持ちがあったのかもしれない。しかし子供とはいえ、ガイドをするのであれば最初にその意志を伝え値段の交渉をするべきであろうし、それなりに英語ができなければいけない。まあ、自分としてはプレゼントを拒否されたことで踏ん切りがついたような感じになった。金をあげる気は全くなかったので、「それなら好きにしろ」と部屋に戻った。ティンブクトゥでは何から何まで後味が悪い。
乾草を運ぶロバ
砂漠に生きるフンコロガシ?
砂漠ツアーに出かける観光客とガイドたち
ラクダを降りて休憩中の観光客
ガイドを買って出た少年
どこへ向かうのかトゥグレグ族の男たち
1 月 4 日 (日) ティンブクトゥからバマコへ
ようやくティンブクトゥを脱出できる日が来た。航空券は買ってあったので、空港まで行かなければいけない。昨日、ホテルでバイクタクシーを頼むと、「10,000 フラン (約 2,000 円) だ」と言う。べらぼうに高い。空港までは町から 4 km だとガイドブックに書いてある。「とんでもない値段だ」と切り返すと、「ティンブクトゥではこの値段なんだ」と平然としている。観光客を食いものにして薄ら笑いを浮かべているそいつの態度に腹を立て、「自分で探すからいい」と啖呵を切った。というわけであてもなくホテルを後にし、空港方面へ向かって歩きはじめた。
するとすぐに後方からバイクの音が聞こえたので、振り向きざまに手を挙げたら止まってくれた。手を挙げた後で気づいたのだが、運ちゃんは軍のものらしい制服を着ている。これはまずいかな、と思ったものの、それでも一応「空港まで乗せてくれないか」頼んでみたら、すんなり「いいよ」という感じで請け負ってくれた。じゃあ、2,000 フランで、というとにして乗せてもらった。最近、新しい空港がオープンしたらしく、空港まで 4 km というガイドブックの倍近くはあっただろう。歩かなくて良かった。空港で約束の 2,000 フランを渡したら「えっ、俺にくれるの」てな感じで受け取り、彼は空港の奥の方へバイクを滑らせていった。多分、彼はタダで乗せてあげるつもりだったのだろう。筆者の英語を理解せず、ただただ頷いていただけなのだ。飛行機に乗り込む前、滑走路上で誰かが呼ぶ声に振り向くと、そのバイクの主が手を振っていた。やっぱり空港の警備員さん (もしくは警備担当の軍人か?) だったのだ。偶然とはいえ、我ながらうまい人に声をかけたものだと、最後に少しだけティンブクトゥの好感度がアップした。
ニジェール川をティンブクトゥ側へ渡るフェリー乗り場
モプティ近くの町
マリの国内線用プロペラ機
バマコ鉄道駅。ダカールへの国際列車が発着する。
バマコ空港ではすぐにタクシーが見つかり、街へ向かう。なかなかの都会であり、古い落ち着いた感じの建物が多い。駅の近くでタクシーを降り、荷物を担ぎ、そこから歩いて博物館へ行った。暑い。カバンを預けて見学する。展示の仕方はよく考えられているが、説明はフランス語しかない。織物と染色のコーナーが充実。淡い美しい色合いの染色に光が溶け込み、独特の気品がある。日本の藍染めとよく似た色合いの布も数多く展示されていた。レストランはすごく雰囲気が良く、ここでゆっくりと食事をした。味が良かったし、何よりもビールがうまかった。満足、満足。近くのテーブルに座った日本人の若いカップルは、注文を終えると 2 人とも別々の本を取り出して読み始めた。マリを旅行しているというのに、話すことがないのだろうか。最近の若者はこんなんだ、と、友人が言っていたのを思い出した。
博物館の後は街をうろつき、余ったフランで土産物を買い、少し早めに空港へ戻った。念願かなったマリ旅行もそろそろ終わりだ。冷房の効いたレストランでビールを飲みつつ、飛行機の搭乗時間まで日記をしたためていた。
マーケットにて (バマコ)
バマコの乗り合いタクシー
マーケットにて (バマコ)
マーケットにて (バマコ)
「
マリを歩く」
ドゴン
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ニジェール・デルタ
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ティンブクトゥ
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Image Lab.
2009 年 2 月 長期専門家 柏崎 佳人 記
"マリ"のスライドショー
をダウンロードする。
(File Name: Mali.mov)