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家畜疾病診断疫学ラボラトリー
National Animal Disease Diagnostic and Epidemiology Laboratory


ウガンダ農業畜産水産省の家畜衛生節足動物局 (Livestock Health and Entomology Department) 国家疾病対策課 (National Disease Control Division) には疫学ユニットと診断・感染症ユニットがあり、両ユニットをあわせて家畜疾病診断疫学ラボラトリー (National Animal Disease Diagnostic and Epidemiology Laboratory) を構成している。疫学ユニットには主任獣医師 (Principal Veterinary Officer) 1名、獣医師 (Senior Veterinary Officer) 4 名およびデータ入力などを行なう秘書職員 3 名がいる。診断・感染症ユニットには、血清学、微生物学、寄生虫学、血液学、組織病理学、化学分析の各検査室、試薬準備室、血清バンク室があり、主任獣医師 1 名、化学分析技師 1 名、テクニシャン 7 名が配置されている。

現在の国家診断疫学ラボラトリーの主要な業務は、EU 支援の PACE プロジェクトが中心となっている。したがって、実験室診断業務も PACE プロジェクトによる検査キットの利用が可能な牛疫などの一部疾病の免疫血清学的検査と、基本的な血液塗抹や糞便の顕微鏡検査にとどまっている。機材については、冷却遠心器は3相電源が必要なため、単相電源しかない現在のラボでは使用不可能なことが判明した。高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーが設置されているが、実用されている形跡はない。今回訪問時にはサーマルサイクラーが新たに届いていたが、PCR を実施するために必要な電気泳動装置などの関連必要機器および各種試薬がなく、このままでは遺伝子解析などの高度な診断は不可能である。以前に青年海外協力隊員が技術を導入した蛍光抗体法による狂犬病の検査は、診断薬 (Conjugate) が無いため、現在は実施出できない。電力事情は昼夜にわたる停電が頻繁に生じている。また電圧が一定しないために、冷蔵冷凍庫やコンピューター制御されている機材類などに悪影響を及ぼしている。ジェネレーターによるバックアップ・システムも存在しているが、燃料の供給体制に問題がある常時稼働させているわけではない。

農業研究機構 (NARO) が設立され、その傘下となった家畜衛生研究所 (LIRI) に畜産・家畜衛生分野の研究部門が集約されたとき、優秀な上級職員が同研究所に移り診断疫学ラボの人材能力の質と量の低下が生じたことを、診断感染症ユニットの主任獣医師である Dr. Ademun は認めている。この点について動物資源水産総局長は、実験室検査診断体制の再強化の重要性を再認識した上で、総局組織の人員体制再編によるラボの人員を強化する意向を述べている。


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エンテベ空港へ入る少し手前で左に折れ、湖側へ登っていくと、プロジェクトのサイトである家畜疾病診断疫学ラボラトリーに到着する。

写真 1:敷地内に入って行くとこの場所に着く。これまでにも多くの援助プロジェクトが実施されていたので、車の数は多い。写真左側の建物が管理棟、奥に立つ木の右側が診断棟であり、手前の赤い屋根が疫学棟である。
写真 2:新しく供与された JICA のプロジェクト用公用車。バックに見えるのはは管理棟の入り口。
写真 3:診断棟。中は広いが機材類が雑然と並べられており、まだまだ効率良く仕事ができるような環境には整備されていない。ドア枠など木の部分が白蟻に食い荒らされているところもある。
写真 4:何故かラボではロバや牛を飼っている。牛には乳牛もいるので、スタッフが生乳を分け合うなどそれなりに役に立っているが、ロバはただ毎日草を食べて寝るだけ、何も生産しない。「何故飼い始めたのか」と聞くと、誰も答えられなかった。
写真 5:疫学棟と松の木。
写真 6:管理棟内事務所からの眺め。右側にうっすらと白くエンテベ国際空港の滑走路が見える。
写真 7:着陸して空港ビルへ向かう国連のプロペラ機。スーダンにでも行ってきたのだろうか。この空港の隣にもうひとつ古い飛行場があり、国連軍はそこを基地としてスーダンなどに展開している。
写真 8:大動物舎。写真 9:湖側、図書室からの景色。


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診断棟内部
診断棟に足を踏み入れるとこの廊下に入り込む。照明がないのでいつも薄暗い。 管理棟の入り口に掛けられているアンコーレ牛の頭蓋骨標本。


微生物検査室。とはいえウイルス関係は扱っておらず、もっぱら細菌検査が主体だ。食品衛生関連でサルモネラ菌の検査と、炭疽が疑われる死んだ野生動物からのサンプル検査が多いという。もちろん死体の状態から炭疽を疑ってサンプルを送ってくるのだろうが、検査といっても塗抹標本を染色して鏡検するだけだ。


生化学検査室。調べているのは薬浴槽内の水の殺ダニ剤の濃度だ。東海岸熱対策のために週に一度は牛を薬浴させる必要があり、殺ダニ剤の濃度を一定レベルに保つことが重要らしい。 洗浄室。余分な機材の保管庫のようにもなっており、壊れた機器類が散乱している。奥に見える白いサンヨーのインキュベーターはまだ新しく、正常に作動する。


血液検査室。血液原虫および臨床生化学的な検査を行っている。つまり血液塗抹標本を作ってギムザ染色し、原虫を探したり、白血球分画を数えているというところ。以前は ELISA なども行っていたらしくプレートリーダーなどが残っている。


寄生虫検査室。糞便検査による蠕虫類の虫卵検査が主業務である。ウガンダには消化管内線虫のヘモンカスが多いとのこと。机に座っているのはこの部屋のラボ・テクニシャンであるローレンス。


血清検査室。EU による PACE プロジェクトの検査を行っている検査室であるため、唯一機材類が整い日常的に機能している検査室といえる。コマーシャルな ELISA キットで牛疫、牛肺疫、口蹄疫、アフリカ豚コレラなどの抗体検出を行っている。鳥インフルエンザについては急速診断テストだけを実施し、陽性反応を示したサンプルは同じエンテベにあるウガンダ・ウイルス研究所へ送り、確定診断をすることになっている。検査をしているのはラボ・テクニシャンのウイリアム。


診断棟の裏に第二診断棟があり、その入り口にこの年季の入ったプレートが掛けられている。 第二診断棟内の一室。PCRを主体とした迅速診断を実施できるようにする予定。現在は整備中で水も出ない状態にある。

疫学棟内部
疫学ユニット。プロジェクトの事前調査ミッションで訪れた JICA 多田専門員と、疫学ユニットの責任者 Dr. ナンティマ。
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