| 活動の概要 | 研修コース | 2005年度前半 | 2005年度後半 |
| 2006年度前半 | 2006年度後半 |
プロジェクト活動の概要

    具体的な協力内容としては主要5疾病(口蹄疫、豚コレラ、出血性敗血症、ニューキャッスル病、鳥インフルエンザ)の診断とワクチン生産性の向上(品質管理)、検疫制度の見直しと家畜移動管理、それに家畜衛生行政一般へのアドバイスがあげられる。タイの協力施設はバンコク郊外15kmのカセサート大学キャンパス内にある国立家畜衛生研究所(National Institute of Animal Health)、および150kmに位置するパクチョンの獣医製剤生産部・口蹄疫診断ラボおよび口蹄疫ワクチン生産センターなどである。これらの施設では周辺国から多くの研修員を受け入れる一方、研修時に講師としての役割を果たしたタイ国専門家が、研修員の帰国後のフォローアップ活動として周辺国のラボを訪問し、研修成果を確実なものとするように努めている。


タイ、国立家畜衛生研究所

マレイシア、獣医研究所


カンボジア、家畜病性鑑定所
    研修活動ではタイとマレイシアで活用できる人材・施設を最大限に活用し、タイ・マレイシアでの研修が困難な分野(先端分子レベルでの診断法など)については、主にタイ・マレイシアの技術者を対象に日本でも研修を行っている。各研修コースとも、講師陣はほとんどが以前に日本との技術協力プロジェクトで育成された人材を中核としている。日本人専門家はコース内容について協議・助言はするが、実際の運営は受け入れ機関が自主的に計画して行っている。
    またこれまで頻繁に批判されてきた「研修のやりっ放し」を防ぐために、研修を終了し帰国する研修員に対して自国の施設・研究所でもすぐに習得した技術が活かせるよう、少額機材の供与および疾病診断とワクチン生産に必要な細菌株、ウイルス株、培養細胞株などの分与を研修受け入れ機関に要請し、可能な限り了承してもらっている。また帰国研修員を軸に関連の国内活動(In-Country Activity)がすでにカンボジア、ラオスおよびミャンマーで実施されている。
カンボジアにおける国内活動:出血性敗血症に対するオイル・アジュバント・ワクチンの効力判定
今後の展望

    野外における感染症の予防と防圧を効果的に進めるため、プロジェクト活動についての今後の方針をこれまでの研修中心の活動から、参加各国での実際の家畜衛生改善活動にシフトしていくことが期待されている。周辺各国から要請されている国内活動はいずれも研修を終えた研修員を中心にした地域活動であり、本プロジェクトとしてはタイ、マレイシアからの専門家派遣、少額機材供与、家畜衛生情報の共有などを通して支援していく方針である。

  

  

    本プロジェクトは広域プロジェクトとしての性格上、インドシナ地域で活動している他の援助機関との提携が必須であり、特にFAOとOIEとはワークショップの共同開催、専門家の供給源としての相互参加、共同事業計画を通して、深い連携関係を維持している。
    本プロジェクトが目指すような複数の国にまたがる広域的な技術協力は、新しい国際協力の仕組みに属する。口蹄疫や鳥インフルエンザのような感染症対策では特に国際的な協調が欠かせない。すなわちこれまでの技術協力の成果を、当該国のみならず周辺国や関係国に効果的に波及させようというだけでなく、地域の家畜衛生当局および関係諸機関の連携と協調を促進し、一国だけでは達成できない課題に対処しようとするもので、地域に対する我が国の貢献としても極めて意義深いものがある。プロジェクトの残存期間はあと2年弱となったが、今後とも関係機関および関係者の支援と協力を得て、予期した成果が達成されることを期待している。
(プロジェクト・チーフアドバイザー 佐々木正雄)