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2007 年度前半の主なプロジェクトの活動( 3 〜 9 月)
3 月
20 日 柏崎長期専門家がウガンダへ向けて日本を出発。これを受けてプロジェクトの開始日となる。2年間の協力期間であるから、終了日は 2009 年 3 月 19 日である。
4 月
11 日 家畜疾病診断ラボのスタッフが集まり、第一回のプロジェクト・ミーティングを開催。柏崎長期専門家がプロジェクトの基本計画 (プロジェクト目標、期待される成果、活動、等)、および国内の支援母体である日大側より提案のあった活動内容について説明を行い、質問を受けた。スタッフ全員がアイディアを出し合い、なるべく早い時期にプロジェクト活動の詳細な内容を作成するということで了解を得た。
18 日
ウガンダ・ウイルス研究所
診断ユニットの責任者 Dr. デオと共に、エンテベの丘の上に建つウガンダ・ウイルス研究所 (UVRI: Uganda Virus Research Institute) を訪問した。かつてデオの父親がここで働いていたという。コンパウンドにはいくつもの施設が建ち並び、機材類も充実している。その多くがエイズ関連の仕事をしており、中でもアメリカの CDC が造った施設は、設備の面で欧米の研究所にも引けを取らない。内部はまるで別世界、目の毒であった。
26~27 日
家畜衛生研究所 (
LIRI)
エンテベ・ラボの所長 Dr. アデムンと、診断ユニットの責任者 Dr. デオと共に東部地域へ出張し、家畜衛生研究所 (LIRI) および3ヶ所の地方獣医事務所 (ジンジャ、ムバレ、クミ) を視察した。ウガンダにおいては何と言っても血液原虫病の重要性が高いことを実感。特にその中では東海岸熱による被害が相当大きいようだ (牛死亡原因の 60-70 %は Theileria parva による東海岸熱)。トリパノゾーマ、バベシア、アナプラズマによる被害も大きいらしい。
5 月
2 日
マケレレ大学獣医学部
プロジェクト支援機関のひとつであるマケレレ大学獣医学部を、所長 Dr. アデムンと共に訪問した。内部を見学させていただき、プロジェクト活動のどの部分で支援をお願いできそうかを見極めるために出かけた。あいにく微生物関係の教員が留守のためにウイルス・細菌分野についての仕事内容を把握できなかったが、病理と分子生物学研究室を見学させていただいた。特に病理はウガンダ国内獣医関係で唯一機能しているラボであると考えられ、大いに期待できそうである。
9 日
クミ獣医事務所、左が Dr. アデムン、右が若い獣医師の Dr. ンセレコ。
調査団がプロジェクトでの連携を推薦していた 4 ヶ所の地方獣医事務所のうち、ウガンダ西部に位置するキボガへ所長 Dr. アデムンと出かけた。この地域でも一番の問題となっているのは原虫病である。中でも東部の事務所を訪問した折に話題に上らなかったのが心水症で、この地域ではかなりの被害が出ているという。検査室には基本的な機材が揃っており、またスタッフにも若くてやる気のある人材がおり、プロジェクトで支援する意義は大きいという印象を受けた。
26 日 約 10 年近く前に供与されたまま放置されていた大型高速冷却遠心器のために、三相電源を設置するための配線工事を行った。
28~29 日
キルフラ事務所に属するカゾ・サブカウンティーの事務所。
診断ユニットの責任者 Dr. デオと共に西部地域へ出張し、4ヶ所の地方獣医事務所 (ムバララ、キルフラ、マサカ、ムピジ) を視察した。これまでに訪問した事務所同様に、ダニ媒介性疾病が一番の問題であるとのこと。キルフラは乳牛の多い地域であり、毎日 100 トンの牛乳をカンパラへ出荷しているということで、ブルセラや結核など牛乳によってヒトに感染する疾病が非常に懸念されている。しかし電気もない地域であるため、ラボを稼働させるのは大変な作業だ。
29 日~ 第二診断棟の改修工事が始まる。同時にメインタンクから水を引くようにするための水道管の敷設も始めた。現在、内部は電気と水の供給が停止状態であり、水道管や電気配線の状態をひとつずつチェックし、修繕しなければならない。また部屋の内部も薬品類や消耗品が散乱状態にあり、それらを整理し、窓や戸棚を修繕し、壁を塗り替えるという一連の作業をすることになっている。
6 月
プロジェクト活動計画 (Plan of Operation: PO) 案の作成、協力隊短期派遣要請内容の具体化および要請書の作成 (地方獣医事務所にて疾病調査を実施)、2007 年度供与機材の選定および見積もりの取得、改修工事進捗状況のモニター、等々の業務を実施。
19 日 PO の内容がほぼ固まり、その内容をラボ・スタッフ間で共有するために第二回プロジェクト・ミーティングを開催。柏崎長期専門家から活動内容について、および今後プロジェクトとの協力関係を築いていく地方獣医事務所 5 ヶ所 (ムバレ、クミ、キボガ、キルフラ、ムピジ) の選定理由について説明を行った。また来月開催予定である Joint Coordinating Committee (JCC) および Steering Committee (SC) 会議についても併せて説明を行った。他にスタッフからコールド・ルームや焼却炉の改修を望む声が上がった。またラボの敷地がオープンであることにより警備上大きな問題があるという認識をすべてのスタッフが持っており、この点について農業省に改善を求めていかなければならない。
22 日
ワクチン製造棟。内部は天井板が剥げかかっているものの、各部屋は非常にきれいで仕事をしやすそうな環境にある。
古参スタッフである技術者の Mr. キデガに案内してもらい、敷地内の施設を視察した。ワクチン製造棟、大動物解剖室、厩舎、焼却炉、など多くの施設が残っているが、ワクチン製造センター以外は全く維持管理が成されておらず、改装するよりは新しく立て直した方が良いと思われる状態にある。ダニ駆除関連棟は非常にしっかりした大きな建物であるが、ホームレスがいく家族も住みついている。これらは植民地時代にイギリスが造った施設であり、当時は東アフリカで最新の設備を誇っていたという。
末日 第二診断棟の改修工事がほぼ終了した。水、電気がすべての部屋において使用可能となり、各部屋は見違えるように改装された。しかしまだ机やベンチ、棚などの修繕が必要であり、もうしばらく工事は続けられる見通しである。
第二診断棟内部の同じ部屋。左が改修前で右が改修後。細かい部分の改装を更に進める必要がある。
7 月
11 日       第一回の Joint Coordinating Committee (JCC) および Steering Committee (SC) 会議を農業畜産水産省内の会議室において開催した。いわゆる関係機関の責任者によるプロジェクトの運営会議であり、プロジェクトの活動方針や成果のモニタリング等を行う。JCC および SC の構成については、動物資源水産総局の各組織および、畜産研究所、マケレレ大学獣医学部、普及担当機関である National Agriculture Advisory Service からの代表とした。また SC の構成員にはこれらのほかに、選定対象とした地方獣医事務所長が加えられた。今回は日本の事務次官に当たる Permanent Secretary が議長となり、JICAウガンダ事務所長、動物資源総局長、家畜衛生節足動物局長、マケレレ大学獣医学部長、動物資源研究所長、ウガンダ獣医師会長などの主要メンバーに加え、クミ、ムバレ、キボガの地方獣医事務所長が参加した。
      会議の主要な議題はプロジェクトの活動計画
となる Plan of Operation (PO) の内容についての議論とその承認であった。この PO は当プロジェクトの開始から現在まで、長期専門家である筆者とラボのスタッフが諸機関から情報を集め、状況を分析し、最も必要と思われる技術や普及活動に焦点をあてて作り上げたものである。
      中央の機関であるエンテベのラボにおいては、ウイルス・細菌の分離・培養技術の改善、組織病理診断の確立、血清診断法の改善をひとつの柱とする。更に感染症の発生に備え、
PCR を用いた迅速診断法の導入をもう一つの柱として活動を進めていく計画である。地方の獣医事務所においては、基本的な機材で足りる寄生虫病の診断法に焦点をあてることとした。その他には重要家畜疾病の調査を実施することとし、協力隊の短期派遣枠を活用してまずはブルセラ病と結核について行う予定とした。
      以上の活動内容について、各委員から反対意見はなく、マケレレ大学獣医学部長や動物資源研究所長は技術的な支援を確約してくれた。特にマケレレ大学獣医学部長の Dr. カバサは、協力隊員が派遣された場合マケレレ大学の学生も一緒に調査に参加させたいと提案された。2 時間にわたる活発な意見交換の後、できるだけ農民に寄与する活動に力を入れるというコンセンサスを各委員から得て、
JCC メンバーによって PO が承認され会議を終えた。
JCC+SC 会議終了後、出席者がラボに移動して内部を見学後、バーベキュー・パーティーとなった。右の写真:バーベキューに参加した JICA 関係者。前列左から協力隊員の西川さん、山田・中川専門家 (養蚕)、後列左から荒川専門家 (労働省アドバイザー)、多田専門員 (農業畜産水産省アドバイザー)。
26 日 診断棟改修の二期工事を開始。今回は第二診断棟のみならず第一診断棟も対象となる。主として床や窓、壁のひび割れ、室内灯など、目に見える部分の修繕を行う。
31 日 ウガンダにおいて進められている他の JICA プロジェクトのひとつ、医療機器維持管理プロジェクトのウガンダ人カウンターパート 2 人が、エンテベの当サイトを訪れて (7 月中に計 4 回) 故障している機材の修理を担当してくれた。これによって放置されていた大型冷凍庫 5 台、インキュベーター 3 台、乾熱滅菌器 1 台が使用できるようになった。特に最近、野外調査による血清の保管場所が不足していたため、冷凍庫が使えるようになったのはありがたい。当地では電圧が不安定であるため、繊細な機材は電圧ガードやスタビライザーをつけていても突然壊れてしまうことがあり、対策に頭を悩ませている。
8 月
3 日 エイズ孤児のための学校を建設し、そのサポートを続けている「プラス」という NGO が毎夏、ワーク・キャンプを開いている。それに参加するためにウガンダを訪れた日本人の若者2人から「JICA の活動を見学したい」という申し出があり、JICA が力を注いできたネリカ (New Rice for Africa) 米の普及を実施している農業省の機関にその2人と訪問した。坪井専門家に対応していただき、陸稲ネリカについて興味深い話を伺った。
7 日 天野協力隊員からの依頼でブギリを訪れた。天野くんはウガンダの NGOUniversal Amazing Grace Ministries に配属されている村落開発隊員である。その NGO は農民や学校を支援する活動を行っており、上記のネリカ米の普及や家畜飼育の改善などにより、農民の生活向上を目指している。特に家畜衛生分野で専門知識を有する人材がいないことから、今回の任地訪問となった。フィールドを訪れ、農家の話を直に聞く良い機会となった。---> 詳細を読む
8 日 ムバレとクミの獣医事務所を訪れ、協力隊短期派遣隊員が担当する予定の疾病調査について、打ち合わせを実施した。
      ムバレの事務所にはそれなりに機材が揃っているものの、固定用のメタノールなど、ちょっとした薬品やガラス器具などが欠けている。一番大きな問題は電気が止められていることであり、その点について善処してもらえるよう、ムバレ県庁まで陳情に出かけた。---> 詳細を読む
      クミの事務所には冷蔵庫 (修理の必要有) と若干のガラス器具しかなく、遠心器や顕微鏡など、ほとんどの機材を供与する必要がある。現在、ポンプが壊れていて水をタンクに上げることができないため、新しいポンプも購入する必要がある。---> 詳細を読む
9 日 ウガンダでは、東部で牛を動力源とした牛耕が盛んに行われているが、西部では畑を耕す牛の姿はほとんど見かけられない。そこで農民から「耕作の改善をしたい」という依頼を受けた西部の農村開発隊員が中心となり、牛耕の西部地域への導入の可能性を探るため、牛の訓練センターとなっている半乾燥地資源研究所 (National Semiarid Resource Institute: NASARI) へ出かけた。---> 詳細を読む
13 日 キボガの獣医事務所へ出かけ、協力隊短期派遣隊員が担当する予定の疾病調査について、打ち合わせを実施した。前回同様 Dr. カムラシと Dr. ンセレコに対応してもらう。2 人ともに非常に意識が高く、調査を行うに当たっての不安材料はほとんどない。また隊員の赴任時には県のゲストハウスを使えるよう、手配していただいた。左の写真は Dr. カムラシが経営する動物医薬品を売る店の看板。---> 詳細を読む
16 日 キルフラの獣医事務所へ出かけ、協力隊短期派遣隊員赴任に向けた診断ラボの改修について調査を実施した。修理が必要なのは、ソーラーパネルからの電気を蓄積しておくためのバッテリーとインバーター、貯水用タンクとポンプで、加えて屋根の張り替えも必要だと判断した。当地には満足な宿泊施設もないことから、隊員はセンター内の一室で寝泊まりすることになる。---> 詳細を読む
17 日 ムピジの獣医事務所を訪問。ムピジには農村開発分野の長期隊員が数多く活動を展開していることから、疾病の調査を隊員とウガンダ人獣医との協力活動と位置づけた。つまり隊員には事前に疾病や検査についての基礎知識に係る研修を受けてもらい、その後でウガンダ人獣医師と現場をまわることにより、家畜飼育とはどういうものなのかを体験してもらうと同時に、農家の要望を汲み取ってフィードバックしてもらえればという狙いもある。---> 詳細を読む
後半 供与機材発注に係る契約、消耗品類、薬品類の調達に多忙を極めた。特に短期協力隊員 4 名の派遣が決まったため、その活動に必要な消耗品・薬品類、地方獣医事務所整備のための物品類などを調達しなければならず、その取りまとめと購入先の選定、国外からの調達法の検討など、いつ終わるともしれない作業が続いた。日本であれば電話ひとつで済むことが、ここでは数日、数週間という単位にスピードダウンし、しかも金額は高くサービスが悪い。
9 月
10~11 日 9 月 10 日と 11 日の 2 日間、村落開発隊員としてムピジ県で活躍中の 11 名を対象に家畜衛生全般に係るセミナーを開催した。ムピジ県の獣医事務所は当プロジェクトのサブサイトのひとつであり、今後、簡易ラボの設置と疾病調査に向け、何らかの形で関わりを持ってもらいたいという配慮から今回の開催となった。二日目には夕方からバーベキューパーティーを開催。---> 詳細を読む
13 日 センターの改修に向けたアレンジをするためにキルフラを再訪した。まず、Dr. ルシータをピックアップしてからヤントンデの町へ資材の調達に出かけた。今回は水タンク、ホースおよび屋根用のトタン板 30 枚を購入し、ピックアップ・トラックをチャーターしてカゾまで運んだ。また、間もなく派遣される協力隊員の居住環境や安全性を確かめるために、小畑調整員も同行された。---> 詳細を読む
25 日 キルフラへ出張。ソーラーシステムを再構築するため、蓄電池とインバーターを持参した。また、屋根用のトタン板 45 枚を追加購入。これで何とか修繕の目処が立つと思われる。キルフラへ行く途上、シマウマの群れに遭遇した (写真左)。
27~28 日
クミ獣医事務所のファウンデーション・ストーン
協力隊の小畑調整員と共に、クミとムバレへ出張。短期派遣隊員受入の最終確認と、居住先の確保を行った。クミでは事務所内の空き部屋にベットを持ち込み、そこで寝泊まりすることになった。水を浴びるのは外であるが、敷地が広く環境も良い。ムバレへ赴任するのは女性隊員であるのでそういうわけにもいかず、ホテル住まいに落ち着く。部屋は狭いが電気とお湯は確保されるので、一長一短といったところであろう。
クミ獣医事務所入り口脇のオープンスペースで。 プロジェクトからジェネレーターを供与した。

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