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口蹄疫 (foot and mouth disease)
1. 発 生
      本病は現在世界的規模で発生しており、我が国では海外からの侵入防止に最大の注意を払っている伝染病の一つである。感染は牛、水牛、めん・山羊、豚・野猪、ラクダ、鹿など広く偶蹄類が起こす。本病では致命率(3〜4%)こそ高くないが、伝染力が極めて高く、かつ一度本病の侵入を受けると広く農産物全般の貿易の障害となるので、侵入をひどく恐れられている疾病である。
2. 病 因
      大きさは 25 mm の最小のウイルスで、核酸は RNA、エーテル耐性の裸のウイルスである。特徴は pH に弱く、6.5 以下では容易に不活化する。この他の特性としては、血清型が多く、
OAC など7つの型の外、各型に更に多くの subtype があり、しかもこれらのサブタイプは非常に変異を起こしやすい。本病では subtype が異なってもワクチンが無効となるので、多価ワクチンで対応せざるを得ない。従って防疫が難しくなっている。
    このウイルスは病畜の血液はじめ全身の各部分に含まれている。筋肉内では死後の pH の低下によりウイルスは不活化するが、骨髄内やリンパ節の中では長く生存可能で、従って生肉と特に枝肉などは本病汚染の恐れが大きく、南アメリカなどからの輸入は厳重に管理されている。
3. 疫 学
      本病の伝搬は気道感染が中心と考えられ、排泄されたウイルスが水滴やゴミと共に飛散して伝搬するものと考えられている。
4. 症 状
      潜伏期は3〜7日位で、40 度前後の発熱と伴って舌上皮、口内、鼻鏡に水疱ができるために牛は多量のよだれを流す。水疱は次第に膨れ、互いに融合し、上皮が破れ、糜爛を起こす。同様の病変は蹄冠部や趾間にも見られる。
唾液分泌過多 (牛)
趾間の水疱 (牛)
蹄冠部下の水疱 (豚)
鼻孔脇の水疱 (豚)
舌上の融合した水疱 (牛)
舌の糜爛 (牛)
乳頭の水疱 (牛)
口唇の水疱 (牛)
5. 診 断
      口腔、蹄などの病変及び病気の拡がり方が重要な参考となる。しかし確実を期するためには、ウイルス学的、血清学的診断によらなければならない。
i) 抗原証明:口腔、蹄部の水疱液・膜乳剤を抗原とし、免疫血清との CF 反応によりウイルスの型を決定する。
ii) ウイルス分離:上記の抗原材料を子牛甲状腺細胞、ハムスター腎細胞などに接種、CPE を起こさせ分離する。血清型は CF 反応により決定する。
iii) 動物試験:哺乳マウスに上記材料を腹腔内に接種するとマウスは発病麻痺を起こして斃死する。このマウスの筋肉乳剤について CF 抗原性を検出する。
6. 予防・対策
      本病ではウイルスの変異が起こりやすいため、生ワクチンは折角作出しても現地の型が変わってしまって合わなくなることが起こりやすい。従って本病のワクチンは不活化ワクチンが主として用いられている。不活化ワクチンは現在ハムスター腎細胞の株化細胞のタンク培養法が主力となりつつある。研究的には最近のバイオ技術により、実際には生きたウイルスを用いずに抗原の作製も可能となりつつあり、これが完成の暁には安全性の確保された環境でワクチンの作製が可能となるわけである。
本文は養賢堂、新版家畜衛生ハンドブックより転載した。
FAO Animal Health Manual No. 16「口蹄疫 (FMD) の防疫要領の策定」をダウンロードする --> pdf file: 576 kb