| 東海岸熱 | トリパノゾーマ症 | 心水症 | 口蹄疫 | 牛疫 | 牛肺疫 | 小反芻獣疫 | リフトバレー熱 | ブルセラ病 | 気腫疽 |
|
ランピー・スキン病 | 牛結核病 | 牛バベシア病 | アフリカ豚コレラ | ニューカッスル病 | 鳥インフルエンザ |
リフトバレー熱 (Rift Valley fever)
FAO Animal Health Manual No. 17「リフトバレー熱 (RVF) の識別」から抜粋
日本大学生物資源科学部獣医学科教授 泉對 博 訳


病気の性状
      リフトバレー熱 (RVF) は人獣共通伝染病で、ヒト、反芻動物、ラクダに病原性を示す。ヒトでは致命的な出血症候群の症状を起こすことがあり、散発的に、または動物に大流行が起きた場合に発症患者が出る。また、インフルエンザやマラリアの重症例のような症例が多いが、目や神経に障害が出るようなこともある。肝炎はヒトと動物共に RVF の特徴である。RVF は、動物の一群で新生児の死亡が頻発し、突然高率に流産が起こることで気がつく。個々の動物の臨床症状は、若齢動物は二峰性の発熱をして起立不能、虚脱状態となり、成獣では乳量の減少、老獣のリンパ腺炎、黄疸を伴う衰弱で死亡する。


病原体
・アルボウイルス (節足動物媒介ウイルス)
・フェレボウイルス (Phlebovirus)
・ブニヤウイルス科 (Bunyaviridae)
RNA ウイルス

      RVF は節足動物媒介性のウイルスで、ブニヤウイルス科 (Bunyaviridae)、フェレボウイルス (Phlebovirus) 属に分類される。本ウイルスは蚊および哺乳動物の体内で増殖する。脂質のエンベロ-プと G1G2 と命名された 2 種類の表面糖蛋白を持ち、遺伝子は LMS3 つの分節から成る。遺伝子上は、全ての RVF ウイルス株は非常に類似しているが、地理的な変異が見られ、2~3 のタイプに分けられると思われる。RVF ウイルスは、蛍光抗体試験 (IFAT) や赤血球凝集抑制試験 (IHA) では血清学的に南アメリカに分布している他のフレボウイルスと交差するが、特異性の高い中和試験では容易に区別することができる。RVF ウイルスは血清学的、免疫学的に 1 タイプである。


感受性動物
・羊、ヤギ、牛
・ラクダ
・水牛 (軽度)
・肉食動物 (犬、猫) および齧歯類 (ウイルス血症を起こす)
・ヒト以外の霊長類 (通常は無症状)
・馬 (不明)

       羊、ヤギ、牛は RVF に最も感受性のある家畜である。しかし、品種の違いによりウイルスに対する感受性の程度に少なからぬ差が見られる。不顕性感染をして臨床症状を示さないものや発熱程度のものから、高熱を発し著しい衰弱から死亡に至る感受性の高い動物まで様々である。一般に、感受性のない品種はアフリカの熱帯、亜熱帯地域の在来種で、感受性の高い品種はヨ-ロッパやその他のアフリカ以外の国から輸入された外来種である。鳥や豚は発病しない。
      RVF の流行がたまに起こる乾燥地帯や亜乾燥地帯に生息する小型反芻動物は、アフリカのギニアやス-ダン地区の羊やヤギよりも感受性が高いように思われる。RVF の発生はス-ダンでより頻繁に起きている。
      在来種の牛は、輸入品種の牛と比べて RVF に対して著しい抵抗性を示す。在来種の牛群では妊娠牛に流産が起こらなくても、同じ牧場の外来種では高率に流産が起こる。成熟ラクダが RVF ウイルスの感染を受けた場合、妊娠ラクダの流産率は 100 %に近い。ラクダでは新生児の死亡率も高い。
      霊長類、齧歯類、食肉動物は、実験的に感染が成立し死亡することもあるが、自然状態では死亡例が観察されてない。アフリカの多くの野性反芻獣は、短期間のウイルス血症や流産を起こすことが報告されている。例えばアフリカ野牛 (Syncerus caffer) は一時的なウイルス血症が起こり、流産することもある。多くの野性反芻獣は、RVF ウイルスに対する抗体を保有しており、ウイルス感染を受けていることがわかる。アジア水牛 (Bubalis bubalis) も RVF ウイルスの特異抗体を保有しているが、相対的に RVF に抵抗性である。RVF により高率に流産が起きた牛群と一緒に飼育されている野牛では、流産の発生ははるかに少なかった。エジプトで RVF が流行した時に野牛で新生児の死亡や流産が頻繁に起きたが、これは RVF ウイルスの感染によると考えられている。このことが事実かどうか明らかでないが、野牛はラクダと比較して RVF に対し相対的に抵抗性であると思われる。
      ヒトの発症例は、多くのアフリカの国で RVF の流行状況を知る上での指標とされている。これは特に、アフリカの角と呼ばれている地域や、サハラ西アフリカや、アラビア半島のような亜乾燥地帯、乾燥地帯で実際に行われている。馬が RVF に感染して発病するか否かは明らかでない。短期間のウイルス血症と抗体の上昇は確認されている。豚はほとんど感受性がないが、高感染価のウイルスを経口投与した場合はウイルス血症を起こす。家禽や野鳥は RVF に感染しない。


地理的分布
リフトバレ-熱 (RVF) は以下の地域で発生してきた。
・アフリカの準サハラ地域
・エジプト・アラビア半島: イエメンとサウジアラビア
・マダガスカル

      RVF の自然流行域は、完全に準サハラ・アフリカの動物地理区で言うエチオピア区である。サウジアラビアとイエメンにおいては、RVF が発生したティハマ地域 (リフトバレ-地域東側) の生態系は紅海の対岸のエチオピアとエリトリアの西部地溝帯地域の生態系と同じである。1977 年にエジプトで RVF が発生しているが、これはアフリカにおいて RVF の流行地域が南へ移動した結果 (もともとエジプトにあった病気) と考えられたが、その真相は分からない。聖書には、エジプトで臨床的に RVF に大変よく似た伝染病が流行したという記述がある。


伝搬の原因
・蚊による
・主たる媒介動物-Neomelaniconium グループの蚊 (Aedes spp.)
・多くの二次媒介動物 --- Culex, Anopheles, Aedes (Stegomyia), Mansonia, Eremopodite の数種
・機械的拡散 Culicodies spp. と他のサシバエ
・動物と動物の接触感染では伝搬しない
・感染した胎児やと殺された動物の組織から粒子化した血液によるヒトへの感染
・と殺された動物の肉

      前に述べたように RVF は節足動物媒介ウイルスによる伝染病で、ウイルスは Neomelaniconium グループのヤブ蚊 (Aedes spp.) で経卵感染が成立している。これらの蚊は、地溝帯の全範囲に生じる一時的な洪水による水溜りや氾濫原で生育する。ヤブ蚊は熱帯林、ギニアやスーダン地域、半乾燥および乾燥地域の沖積河川氾濫平野ならばどこでも見られる。洪水は明らかに降雨状況に左右され、湿潤な多雨地帯ではしばしば、乾燥および半乾燥地域ではたまに生じる。しかしながら、森林地帯では、毎年または隔年に RVF ウイルスを保有した媒介昆虫が現れるが、RVF ウイルスの活性を示唆する感受性動物が存在しない。非感受性の動物は、南北アフリカ大陸全土に広がっている主に潅木や林のある草地と半乾燥地帯に生息している。
      RVF が伝染病として問題になっているのは後者の地帯である。伝染病の原因ウイルスの活動は、通常以上に持続する激しい降雨の期間に関係してきた。この降雨がアフリカ大陸の各地で dambowalodiei などと呼ばれている水たまりが氾濫するレベルにまで水位を上げてしまう。これらの氾濫は数週間続く。河川の氾濫平野は、その地区の降雨ではなく、遠方の降雨の結果として氾濫する。この氾濫が A. lineatopennismacintoshivexans などの Aedes (Neomelaniconium) 属の蚊の、1 回目の発生を引き出す。これらの蚊の一部が RVF ウイルスに感染している可能性があり、反芻動物やラクダが水たまりから水を飲んだり近くの餌を食べたりすると、ウイルスに感染する。これらの感染が流行に結びつくか否かは、水たまりが 4 から 6 週間あるいはそれ以上続くかどうかにかかっている。もし続くと、第 2 代目の媒介動物である蚊が増殖し、RVF の流行期間に見られる蚊の大発生を起こすことになる。これらの蚊は CulexAnophelAedes (Stegomyia)、および Mansonia などの属のいくつかの種である。サシバエが機械的に RVF ウイルスを伝搬する可能性のあることも知られている。最も重要な伝搬要因となる「飛ぶ針 (flying needles)」は Culicoides spp.Stomoxys spp.tabanids のようである。Glossina spp. (ツェツェバエ) も機械的に RVF を伝搬することができる。


RVF の拡散
      RVF の大流行を起こし易くする気候的条件は地域的な自然にあるようである。南北回帰線内 (ITCZ) のような気候は大陸的な特徴である。このことが伝染病の流行初期に RVF が同時に多発的に起こることを説明している。その病気は古典的な伝染病のような伝搬様式をとらない。それは 1 つの地域のいくつかの国で同時に発生する。ある局地的な所への伝搬が、感染した媒介昆虫の動きによって初発地から広がる可能性はある。しかし伝染病を流行させる RVF ウイルスの活動には、巨大な数の媒介昆虫の存在が必要で、これが起こる潜在的な条件は限られている。
      本疾病は 8-16 週続き、その後感染率が低下し、消滅する。感染曲線は、半乾燥や乾燥した状況では 16-20 週で完結する。しかしもっと温度の高い海岸や湿潤な高地の地域では 1-2 年続いたこともある。
      RVF は、感染した動物が感染地域から非感染地域へ移動することで拡散していくという確認はない。しかしながら、これは理論的には起こりうることで、エジプトやアラビア半島で本病気が発生した理由として考えられてきた。しかしこの考えを支持する証拠はない。貿易が地球規模で行われ、移動時間が短縮されたことも、動物の病気が国境を越えて伝搬していく上で新しい可能性を生み出しており、動物疾病の疫学や伝搬を考えていく上で考慮しなければならない。
      RVF の動物から動物への直接伝染あるいは接触による伝染は証明することが難しい。この伝染様式が動物の伝染病で重要な役割を果たしているという根拠は、野外調査からは得られていない。蚊の生息域から移動させた感染羊や感受性のある羊の群から数日以内に RVF が完全に消滅するという結果が出ている。RVF は、媒介昆虫で増殖することによって伝搬する動物のウイルス病である。

RVF の感染による羊の流産

RVF の感染により流産した羊の胎児。流産は妊娠のいかなる時期においても起こりうる。

RVF の感染により流産した牛の胎児 (Foreign Animal Diseases より転載)


RVF の症状
      リフトバレ-熱 (RVF) の流行は、前に記載したように気候の変化に続いて起こり、通常持続する激しい降雨や洪水と、その後に生ずる蚊の大発生と関係している。疾病は劇的に突然発生する。最初の症状は感染した動物の種類や遺伝的要因によって異なる。綿羊、ヤギ、ラクダの流産が広範囲に突然始まることが最も重要な兆候である。また、これら全ての動物種で、新生児が出産後まもなく突然死をしたり、病状を示したりする。感受性の羊ではほとんど 100 %の新生児が死亡する。1-4 ヵ月齢のより高齢な動物では、元気が消失し、急性熱性疾病に苦しみ、10-40 %が死亡する。搾乳をしている成獣は発熱と共に乳量が低下する。しかし、全ての年齢層でいくらかの死亡がでる。例えば、外国から導入した外来の若齢羊では、急性肝炎や黄疸を起こし、死亡する。家畜を取り扱っている人々の間でインフルエンザ様の疾病が同時に発生することも、RVF 流行に付随した特徴である。
      アフリカ原産の牛や綿羊の抵抗性遺伝子を持つ品種は、短期間のウイルス血症を起こすだけで、通常は何の臨床症状も示さない。しかし、別の原因で生じた牛や羊の流産を誤診することがある。小型反芻動物の流産発生率は 30 %に達するが、アフリカ原産種ではこのようなことはめったにない。

臨床症状
・突然の流産の多発
5-6 日齢以下の子羊の 100 %に至る死亡率
・成獣での高熱、リンパ節炎、鼻汁や目やにの排出
・おびただしい悪臭下痢便 (しばしば出血性)
・嘔吐、激しい腹痛
・著しい意気消沈、泌乳低下、黄疸
8-16 週にわたる流行

羊とヤギにおける RVF
      羊とヤギの RVF の臨床症状は、疾病の程度によって 4 つに分けることができる。それらは、甚急性、急性、亜急性、不顕性である。それぞれのグル-プは分けて考えられる。通常、ヤギは綿羊ほど重症にならず、罹患率や死亡率も低く、流産も少なく、臨床症状も軽度である。
甚急性 RVF
      高感受性の羊は、周囲の動物間に RVF が流行している状況で、90-100 %の流産を起こす。そのような期間に生まれた 10 日齢以下の新生子羊は、80-100 %が RVF により死亡する。死亡の大半は、40-42 度の発熱後 12 時間以内に突然起こる。衰弱や死亡は全ての動物に見られる。少し日齢の進んだ羊は意気消沈し、衰弱し哺乳や起立が不能となり、発熱、 呼吸数増加、虚脱状態以外の臨床症状を示す間もなく、24-48 時間以内に死亡することがある。
急性 RVF
      2-3 週齢より週齢が進んだ全ての高感受性種では、高熱、呼吸数増加、化膿性または出血性膿様鼻汁、結膜炎、嘔吐、腹痛を伴う激しい臨床症状を示す。全身性のリンパ節炎と歩行異常が認められる。動物は動くのを嫌がり、横臥状態となりしばしば出血性下痢や流産を起こす。死亡は 24~48 時間後に起こり、群内の流行は 10 日間持続する。死亡率は 10-60 %になる。回復した動物は通常様々な程度の黄疸を示す。
亜急性 RVF
      この症状は成獣でよく起こる。発熱は 41.5-42 度にまでなり、1-5 日続く。食欲不振、結膜炎、鼻漏、嘔吐、その他の症状が見られるが、通常若齢動物より軽度である。流産は下痢と同様に本疾病の特徴である。腹痛はあまり明確でなく、発症動物は群としての行動にいくらか遅れをとる。動物は衰弱して数日間横臥するが、大部分は回復する。多くは黄疸症状を生じ動きが鈍くなり、数ヵ月間衰弱が持続する。死亡率は 5-20 %である。
不顕性 RVF
      この症状は年をとった動物や抵抗性品種で起こる。一時的な発熱があるが、気づかないで終わる。発熱は意気消沈や短期間の食欲減退とともに起こるが目立たない。これらの感染は、後の抗体検査で発見される。しかし、流産は起こるかもしれない。

牛の RVF
甚急性 RVF
      10 日齢以下の仔牛はこの症状になり、ほとんど前兆を示さず 20-24 時間以内に死亡する。観察される症状は、出血性膿様鼻汁、流涙、呼吸速迫であり、体温は 41.5-42 度になる。横臥状態の動物には、強直性の発作が起き、呼吸困難が次第に激しくなり、完全に意気消沈となる。病気の経過は急速で、48 時間以内に死亡する。感受性の遺伝子を持つ牛の死亡率は 70 %になる。
急性 RVF
      より年齢が進んだ仔牛、当歳の牛や成獣でさえも 41.5-42 度の高熱、血色性膿性の鼻汁、食欲不振または廃絶、意気消沈が見られる。感染動物は数日間続くおびただしい量の悪臭を放つ出血性下利便を伴う腹痛を起こす。呼吸困難となり湿った咳をする。体表のリンパ節は通常肥大し、必乳牛では乳量の異常 (低下) が見られる。口や鼻からの出血も見られる。一般的には流産も起きる。発熱や嘔吐は 3-10 日間続き、その間に多くの牛が死亡する。黄疸が出て、それがひどい場合はその後死亡する。
      3 ヵ月齢から成獣まで、いずれの月齢の牛でも上記症状の全てまたは一部が見られ、死亡することがあるが、より若齢のグル-プでより一般的に起こる。死亡率は感染を受けた群の年齢によって 10-40 %の間で変化する。感受性の牛でもより年齢が進んだ牛では、死亡率は 5-10 %となる。
亜急性 RVF
      より高齢の牛では通常 RVF 感染を受けてもあまり明確な症状を示さず、膿様鼻汁、涙漏を伴った短期間の体温上昇、3-7 日間にわたる乳汁分泌異常程度である。腹痛を伴った大量の水溶性下痢が短期間続くこともある。湿った咳や呼吸数の増加などの呼吸器症状が見られることもある。流産はおそらく最もよく起こる症例で、発病初期から発症後 6-8 週までの間に見られる。死亡する場合もある。持続性経過はこのような軽度の感染があった場合に起こり、通常は軽度または重度の黄疸を伴う。光に敏感になることは RVF ウイルス感染動物によく見られる一般的な後遺症である。
不顕性 RVF
      成長した感受性の牛やアフリカ原産の牛は RVF に比較的抵抗性で、大部分は不顕性感染に終わる。流産は感受性遺伝子を持つ牛でこの感染の後に起こることがあるが、アフリカ大陸の昔からの流行地域の原産種ではめったに起こらない。これが最も一般的な RVF の流行形態で、血清診断の結果から流行があった地域が明らかになった後で、その地域の牛に乳量の低下や流産があったことに気がつく。

ラクダの RVF
      普通、ラクダは臨床症状を示さず、不顕性感染をする動物群に分類されている。ウイルス血症は短期間であるが、流産は頻繁に起こる。牧畜家から「全てのラクダで流産が起きた」と報告が来る。感染は血清試験から確認できる。RVF の流行期間に生まれたラクダの子供は出産後早期に死亡するが、おそらく RVF の感染によるものであろう。

野生反芻動物の RVF
      野生反芻動物は、RVF が流行している同じ草地で飼育されている家畜が発症していても、何の臨床症状も示さない。しかし野生反芻動物にも RVF ウイルスに対する抗体上昇が見られ、不顕性感染の後に流産が起きている可能性があるが、野外でそれを証明することは困難である。アフリカ野牛 (Syncerus caffer) は、実験感染をすると 2 日後にウイルス血症を示し、妊娠獣では流産が起きる。


臨床病理
・白血球減少
・肝障害に関連する酵素の血中濃度上昇
・血小板減少

      ウイルス血症は二峰性の発熱期間中持続し、おそらく解熱後も続く。重度のリンパ球減少症が見られ、それは感染初期に顕著である。重度の肝障害が起こり、その結果、この症状に関連する酵素であるグルタミン脱水素酵素 (glutamic dehydrogenase: GLDH) などの血中濃度が上昇する。

肝臓の病変: 出血と壊死

腸の漿膜表面の点状出血

第 4 胃粘膜の出血


全体的な黄変と点状出血は肝臓壊死の特徴的な所見である。 (Foreign Animal Diseases より転載)

出血性、水腫性のリンパ節

血液が混じった鼻汁の排泄と鼻孔の出血


RVF の剖検所見
・肝臓の肥大、始めは局所その後しばしば全体に広がる壊死
・肝臓のうっ血. 赤褐色から黄色を呈する。
・全身の点状または斑状出血
・しばしば重度の出血性胃腸炎
・全身のリンパ節腫脹
・肺水腫、肺気腫
・胎児では自己融解を伴う同様な病理所見が見られる。

      最も重要な病理所見は肝臓で見られる。現れる病変の強さは発症した動物の年齢や感受性の程度による。若齢動物ほど重度に、年齢が経過したものほど軽度になるように思われる。
      肝臓の病変は、感染初期に生じるので、RVF で死亡した全ての動物に認められる。初期段階では、肝臓はうっ血、肥大、充血により周辺は丸みを帯び、多数の点状出血が見られる。後期になると壊死は 1~3 mm の小さな病変となって目立つようになり、それらは癒着してより広範囲に壊死を形成し、その変化は肝臓全体に広がる。
      皮質のいたる所に広範囲にわたる点状ないし斑紋状出血があり、それらは皮膜下の組織で見ることができる。壊死性変性は黄疸を誘起し、赤褐色でうっ血の様相を呈するようになり、壊死の範囲と黄疸が進行する。後期には黄疸により肝臓が完全に黄色になる。
      点状ないし斑紋状出血は死亡した子羊のいたる所に認められる。それらは特に体腔の漿膜や胸膜表面、心臓、胆嚢、腎臓、膀胱その他の器官で目立つ。血液の混じった腹水が貯留することもある。
      消化器官には、通常カタル性ないし出血性の炎症や壊死がいくらか認められる。特に第 4 胃、小腸、回盲部の漿膜表面や粘膜内層に出血がある。
      肺は水腫や気種によりうっ血し、通常胸膜下出血が見られる。心臓では心外膜や心内膜に出血が起こる。表在リンパ節や内臓リンパ節を含む全身のリンパ節腫脹が起こる。
      脾臓では被膜下出血により腫大化する場合と、そうでない場合がある。
      同様の病変が胎児にも見られる。特に肝臓には様々な程度の病変が見られる。胎盤に壊死も見られる。


脾臓の被膜下出血

RVF 感染による肝臓の壊死

検査材料を接種して24時間後の培養細胞内の RVF ウイルス抗原


類症鑑別診断
      リフトバレー熱 (RVF) の単一症例は、羊に突然死を起こしリンパ節の腫脹と体のいたるところに点状出血と斑状出血を生ずる多くのウイルス病と混同する可能性がある。しかし、RVF は以下のような特徴のある症状を現す。
・妊娠のあらゆるステージにおける多数の流産が突然起きる; これらは各地に広がり、全国的な流行となることもある。
・幼若動物で高死亡率の急性熱性疾患
・全症例において肝障害が認められる。
・蚊の大発生や草地の浸水と関連している。
・ヒトはインフルエンザと類似した症状を発症することがある。

このような症状を示す他の疾病を以下に述べる。
・ナイロビ羊病 --- 肝炎はなく新生子羊には認められない。
・ブルータング --- 口部と足部の病変 (蹄冠炎)
・心水病 --- 体腔に漿液性の液体貯留; 神経症状
・牛流行熱 --- 横臥と急速な回復
・ヴェッセルスブロン病 --- 稀なウイルス病、RVF より重症ではない。
・トキソプラズマ症、レプトスピラ症、ブルセラ症、Q 熱、サルモネラ症 --- 基礎的診断による類症鑑別が必要
・小反芻獣疫 --- 子羊の高死亡率
・口蹄疫 --- 小反芻動物の新生子の大量死と流産 (は口蹄疫には認められない。訳者注)


RVF の診断
      国際獣疫事務局 (OIE)Manual of standards for diagnostic tests and vaccines には、RVF 感染症鑑別のためのサンプル収集と類症鑑別試験の手技についてのガイドラインが記載されている。
      もし、牛、羊、ヤギ、ラクダで多数の突然の流産が発生し、新生子の大量死や肝臓の病変が認められた場合は、RVF を疑うべきである。罹患した動物に関系した人々の発症例も仮の診断を下す場合に役立つ。暫定的な診断は、疾病の突発的発生状況と共に、高密度の蚊の存在といった臨床症状と気候や生態学的な要因に基づいて行う。
      診断試験には 2 つのタイプがある。1 つは RVF ウイルスまたは抗原を分離または同定するためで、2つ目は RVF ウイルス特異抗体の抗体価の上昇または IgM 抗体を証明するためのものである。試験方法の選択は、安全性を確保できる利用可能な設備によって決まるであろう。

RVF ウイルス/抗原の検出
・検査組織 (肝臓か脾臓) と RVF 陽性標準抗原、陰性標準抗原、免疫血清を用いた単一寒天ゲル二重拡散試験
・抗原捕捉 (Antigen capture) ELISA テストは RVF ウイルス抗原の検出に利用可能である。
RT-PCR (逆転写 PCR 反応) による RVF ウイルスの同定
・授乳期または離乳マウス、もしくはハムスターの腹腔内接種によるウイルス分離 (マウスとハムスターは 3-4 日以内に死亡する)
・組織培養でのウイルス分離: RVF ウイルスは培養 12~36 時間以内に免疫蛍光抗体法もしくは固定した組織のペルオキシダーゼ染色によって同定される。
・ホルマリン固定組織のクリオスタット切片の免疫組織化学的手法による RVF の染色
・肝臓の組織病理学的所見には RVF に特徴的な、細胞質内および核内封入体を伴う肝臓のネクローシスが見られる。

RVF ウイルスに対する特異抗体の検出
IgM 抗体の ELISA 試験
IgG 抗体の ELISA 試験
・マイクロプレ-トによる組織培養細胞を用いたウイルス --- 血清中和試験
・組織培養細胞によるプラーク減少試験
・間接蛍光抗体法 *
・間接血球凝集試験 *
* これらの試験は、他のフレボウイルスとの間で低い交差関係がみられるが、高抗体価が検出された場合は特異抗体と判断してよい。1/160 から 1/320、もしくはそれ以上。

RVF 診断のための検査材料収集
冷却するが冷凍してはならない。
EDTA もしくはヘパリンを添加した血液
・氷詰めの肝臓,脾臓またはリンパ節の組織切片
・緩衝剤を添加したホルマリンに入れた上記の組織切片
・氷詰めの胎子の肝臓と脾臓
・血清学的試験に用いる血清を分離するための凝固した血液 (分離した血清もしくは発送するまえに血餅を除いたもの)
      全ての組織サンプルはできるだけリン酸緩衝液・グリセリン混合液に入れて輸送するべきである。ホルマリン緩衝剤に入れた組織片は、状態が良くなくとも、長期間変性することなく輸送される。詳細を知るには OIEManual of standards for diagnostic tests and vaccines を参照すること。

RVF が発生した場合にはどんなサンプルを集めるべきか ?
      羊やラクダ、牛が流産し、新生子が死亡するような RVF の発生した現場においては、以下のサンプルを収集することが推奨される。
・少なくとも 10-20 検体の最近流産した動物の血清
・流産していない動物の血清 10-20 検体
40.5-42 度の熱発をしている動物の凝固防止剤を添加した血液
・死亡した動物から得た新鮮な肝臓と脾臓を氷詰めすると共に、リン酸緩衝液、ホルマリン緩衝液にそれぞれ入れる。
・新鮮な胎子から得られた肝臓と脾臓、脳

どんな情報が必要か ?
      以下の基本的な情報を集めるべきである。
・サンプルを採材した現場を参照できる地図もしくは住所
・所有者の名前、連絡先、電話番号など
・感染動物の集団、群、品種、系統、数と年齢層
・最初の症例が出た日付/採材した日付
・感染していない,死亡していない,流産していない動物の年齢層
・十分な臨床的経過
・発熱した人の有無
・病気が発生した地域の基礎的な生態学的特徴


FAO Animal Health Manual No. 17「リフトバレー熱 (RVF) の識別」をダウンロードする --> pdf file: 576 kb
FAO Animal Health Manual No. 15「リフトバレー熱 (RVF) 緊急計画の準備」をダウンロードする --> pdf file: 648 kb
Foreign Animal Diseases をダウンロードする --> pdf file: 4.4 Mb