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牛疫 (rinderpest)
FAO Animal Health Manual No. 7「牛疫 (Rinderpest) の防疫要領策定マニュアル」から
"第 2 章 疾病の特徴" を抜粋して掲載
阿部 香里 訳

牛疫もしくは牛ペストは、野生及び家畜化された反芻動物及び豚の急性で伝染率の高いウイルス性疾病である。突然の発熱、目や鼻からの分泌物、壊死性口内炎、胃腸炎及び死を主徴とする。非汚染地域の感受性の高い家畜集団では、罹病率と死亡率は 100 %に近い。ウイルス型によっては、症状は穏やかで、その場合の疾病感染の死亡率は低くなる場合もありうる。

世界分布
      以前は欧州、アジア、そしてアフリカ全土にまたがって広がっていた疾病であるが、現在は南アジア、近東そして東アフリカの一部地域に限定されている。この状況に至るまでには、様々な国家レベルもしくは地域単位の牛疫撲滅計画に依るところが大きい。FAO が推進する全世界規模での牛疫撲滅は2010年までの完全撲滅を目標としている。

病 因
      牛疫ウイルスは paramyxovirus 科の morbillivirus 属に属する。同属には他にヒトの麻疹ウイルス、野生及び家畜化された小型反芻動物の小反芻獣疫ウイルス、イヌと野生肉食動物のジステンパーウイルスと水棲哺乳類の morbillivirus がある。牛疫ウイルスの血清型は単一だが、様々な株があり、株により病原性が異なる。


感受性動物
大型家畜反芻動物: 恐らく全ての偶蹄類動物が牛疫に感受性があるが、重い症状が見られるのは一般的に牛、家畜化した水牛とヤクである。牛は品種によって牛疫ウイルスに対する臨床症状が異なる。長年牛疫と共存したことにより、ある品種はその品種固有の高度な抵抗性を獲得した。
羊と山羊、豚、ラクダ: 一般的に感受性が低いが、臨床症状を示すこともある。 アジア系の豚も感受性があり、発症することがある。ヨーロッパ種の豚は感受性が低い。後者は不顕性感染することが多いが、疾病の保持にはほとんど関係がない。ラクダは感染しないので、牛疫の伝播と保持には関与していない。
野生動物: アフリカスイギュウ、エランド、キリン、レッサークードゥー、イボイノシシ、アジアの各種アンテロープ、ウシ科やブタ科の野生動物は牛疫に対する感受性が非常に高い。その他のアンテロープ、カバ、インドブラックバックは比較的感受性が低い。野生動物の群が、牛群と共存することなく単独で疾病を半永久的に維持できることを示す証拠はない。
      牛疫は人には感染しない。


伝 染
      牛疫は、ほとんど例外なく、群同士もしくは新しい土地などへの感染動物の移動によって伝播する。感染牛は、臨床症状が現れる 2-3日前からウイルスを排出し始める。一連の発熱の後、そのまま 9 日から 10 日ほどウイルスを排出するが、ウイルスを保有するのは一般的に 3 週間以下である。本病の明らかな臨床症状が見られる以前に、感染牛は長距離移動中や家畜市場を介してウイルスを伝播する。
      牛疫ウイルスは吐息、目鼻漏、唾液、排泄物、乳、精液、膣液、尿などから検出される。主に飛沫小滴を含んだ感染動物の吐息の吸入、もしくは感染動物の分泌物・排泄物との接触により伝染する。伝染は主に近距離で起こるが、たまに、100 m 離れた場所、夜間など高い気温や日光などの影響が最小限で、特に高湿度の状態ではそれ以上離れた状態で伝染する可能性もある。
      ウイルスに汚染された飼料や水の摂取による経口感染も可能性がある。4度で貯蔵された感染肉は、少なくとも 7 日間は感染性を保持する。感染肉や分泌物や排泄物によって汚染された飼料がブタの感染原因となることがあり、その後疾病が牛に伝染することもある。
      牛疫は媒介昆虫からは伝染しない。

ウイルスの安定性
      pH 7.2-7.9 の場合に牛疫ウイルスは最も安定しており、気温 4 度で pH 5.6 以下か 9.6 以上で急速に失活する。ウイルスは室温下で太陽光線や乾燥条件下で急速に失活する。日向の牧草地であれば、6 時間程度でウイルスは不活化されるが、日陰であれば 18-48 時間なら感染性が持続する。地面が露出している汚染された囲い場においては感染性は 48 時間以下で失われるが、汚染された建物では最大 96 時間伝染性が持続する。
      ウイルスはエンベロープを持っており、多くの脂溶性消毒薬に非常に敏感である。ウイルスは酸性及びアルカリ性の条件にも敏感である。ウイルスは自己分解と腐敗によって急速に不活性化され、本病が原因で死んだ動物の死体では 24 時間以上生存できない。
      ウイルスは臨床症状が現れる前 1-2 日間、牛乳に排出されるが、ウイルスを不活化するには牛乳の熱処理か低温殺菌で十分である。

感染初期における結膜炎および粘液膿性の滲出液

感染初期における過度の流涎

壊死性口内炎


臨床症状
1.
      牛疫は、ある一定の状況では、牛群に破壊的な損失をもたらすことがあるが、慢性化した区域や部分的に免疫がある群に与える影響は比較的少ない。この疾病はウイルスの株による差異、宿主及び動物の飼養管理形態等いくつかの要因によって、甚急性、急性または軽症と症状が異なる。

甚急性牛疫: 甚急性の牛疫では、壊死性口内炎が現れる以前に、突然の発熱、食欲不振、沈うつ症状、目視可能な粘膜の充血及び 2~3 日以内の突然死などの症状が認められる。

急性牛疫: 国際獣疫事務局 (OIE) 国際家畜衛生規約では、牛疫の潜伏期間を家畜衛生管理上 21 日間としている。感染経路、ウイルスの量と株による病原性の違いによって潜伏期間は変化する。一般に、初発例とそれに続く第 2 例の発症の間には約 2 週間程度の間隔がある。
      本病は、まず始めに 3~5 日から 2 週間程度継続する突然の発熱が見られたのち平熱に戻るのが典型的である。これに、落ち着きがなくなる、沈鬱症状、食欲不振及び産乳量の著しい低下などを伴う。呼吸は浅く速迫である。1-2 日後、流涙、鼻漏そして目鼻の粘膜の著しい充血が見られるのが典型的である。
      一連の発熱の 2~5 日後、極小の灰色がかった壊死部が歯茎及び口唇に現れる。病変部は多くなり、大きくなって融合し、口腔粘膜 (舌の側面及び裏面を含む) を覆う厚く黄色い偽膜を形成する。壊死片は容易に剥落し、基底細胞が赤い層になった浅い糜爛が残る。同様の糜爛が鼻、陰門及び膣の粘膜にも認められる。唾液の分泌が亢進し、唾液は当初粘液状で後に粘液膿状となる。特徴的な悪口臭が認められる。
      口部病変出現の後、1-3 日後から下痢が始まる。便は始め希薄で暗色、後に水様となり、粘液、上皮の断片及び凝血塊を含むこともある。時には排泄物が赤色液状を呈する場合もある。感染動物は背部を湾曲させ緊張し、時として充血し糜爛した直腸粘膜を露出する。
      呼吸は苦しそうで苦痛を伴い、呼気時にうなるような音が聞こえることもある。致死的な例では、下痢が悪化し続けるため、急速な脱水症状が進み著しく消耗する。その後座り込み、発熱開始から 6-12 日後に死に至る。死に至らない場合も、糜爛が癒え下痢が止まっても長い回復期を経るため、完全な健康回復には何週間もかかる。妊娠牛では回復期間中によく流産が認められる。 鼠蹊部及び脇下等の体毛が少ない部分にみられる斑状丘疹が皮膚病変として記録されている。

軽症牛疫: 軽症牛疫の経過と臨床症状は古典的な牛疫に類似するが、症状の発現はより穏やかである。基本的な症状の1つかそれ以上が認められないか、または現れても一時的である。特に口部糜爛は弱いことがある。感染牛のほとんどが回復し、回復期間も短い。
      この軽症感染の結果、潜伏感染している病原体 (特にプロトゾアなど) が発熱等の前駆症状の 4-6 日後に活性化することが多い。この活性化した感染の症状が優勢となり、牛疫の臨床症状の出現を覆い隠すこともある。

2. 羊と山羊
      小型反芻動物は、一般にこの疾病の亜急性型に感染することが多い。特に目立った身体的症状を伴わない一時的な発熱が特徴である。小反芻獣疫 (PPR) が慢性化している地域では、牛疫のように見える病状のほとんどは小反芻獣疫である可能性が高い。しかし急性の牛疫が小反芻動物で見られることもある。発現する臨床症状は牛のそれに類似し、発熱 (直腸内検温 41-42 度)、融合する壊死性口内炎、流涙、鼻漏、結膜炎、肺炎及び下痢になどが見られる。

3.
      アジア系の豚は甚急性や急性の牛疫に感染することがある。甚急性型は突然発熱し、特段の前駆的症状なしに死に至る。アジア系の豚における急性型では、突然の発熱、食欲不振、沈うつ症状、震顫、嘔吐及び鼻からの出血などの症状が認められる。浅い糜爛、下痢、急性進行性の脱水及び削痩の後、死に至る。

4. 野生動物
      野生有蹄類では、牛疫の症状がそれぞれ著しく異なる。水牛は基本的には牛と病状が同一で、レッサークードゥーは、夥しい量の流涙が認められ、角膜が不透明になり、脱水症状及び絶食のため死に至る。牛疫感染の危険がある区域で、野生有蹄類の間に説明がつかない罹病率及び死亡率の上昇が認められた場合は、牛疫を疑い完全に調査するべきである。一般に、牛では軽症である牛疫ウイルスの系統が、感受性のある野生動物種では重い症状を引き起こすこともある。


病理解剖所見
      死体は脱水症状を呈し、削痩して下痢気味の排泄物にまみれていることもある。眼球は落ち窪んで、粘液膿性の分泌物がこびりついている。鼻鏡部、鼻孔周辺も同様の分泌液で覆われていることがある。
      口腔には、壊死組織及び上皮剥落による糜爛が主に歯茎、頬部の小乳頭状突起、舌の側面・裏面及び軟口蓋に認められる。重症例では、これらの糜爛が咽頭、食道及び前胃まで及ぶ。充血、浮腫、出血及び糜爛からなる病変が、第四胃及び小腸でも認められることがある。
      大腸では、盲腸から直腸、特に回盲結合部及び盲腸扁桃の辺りに様々な充血、糜爛及び線状出血 (通常ゼブラ・ストライプ、シマウマ縞模様と称される) が認められる。これらの出血は新しい死体では鮮やかな赤、古い腐敗が進んだ死体では緑がかった黒となる。上部の呼吸器粘膜は充血し、出血することがある。肺は初期段階で死亡した動物では正常であることも多いが、疾病が進行すると充血し、小葉間及び肺胞に気腫がみられることがある。
      迅速に死亡した例の場合、リンパ節は膨隆し、浮腫性であるが、疾病後期に死亡した例では縮小し灰色で、皮質に放射状の縞が認められる。通常、脾臓には異常が認められないが、時折、辺縁に沿って奬膜下出血が認められる。


堆積している壊死的なパイアー斑 (小腸壁のリンパ節の集団組織) の上皮

結腸上部における粘膜の潰瘍

盲結腸部における充血および出血による病巣の強調


結腸の縦縞に沿った線状の充血および出血 "シマウマ縞模様"

胆嚢粘膜における出血


組織病理所見
      鏡検では、主として広汎なリンパ球の溶解が認められ、リンパ節及び脾臓の中心部のリンパ球生成部位におけるリンパ球の減少を伴う。消化管の上皮性細胞では壊死と潰瘍が起こり、多核巨大細胞の形成を伴い、リンパ系細胞及び食道の上皮細胞には核内及び細胞質内封入体が認められる。鏡検では、主として広汎なリンパ球の溶解が認められ、リンパ節及び脾臓の中心部のリンパ球生成部位におけるリンパ球の減少を伴う。消化管の上皮性細胞では壊死と潰瘍が起こり、多核巨大細胞の形成を伴い、リンパ系細胞及び食道の上皮細胞には核内及び細胞質内封入体が認められる。

免 疫
      牛疫ウイルスは免疫的に単一であり、ある株に対する免疫は他の既知の全ての株に対しても有効である。従って1つのワクチンで全ての野外株に対する免疫ができる。古典的な牛疫では、感染から1週間以内で血清抗体が検出可能となる。但し、より穏やかな株に感染した動物や、組織培養牛疫ワクチン (TCRV) を接種した動物では、中和抗体が発現するまで 10 日以上かかることがある。ワクチン接種の目的である免疫獲得については、動物はワクチン接種後1週間で実用的なレベルの免疫ができるが、血清抗体の力価が最高になるまでは約 3 週間かかる。血清中和抗体は感染に対抗する能動的な免疫作用の重要な部分を占め、回復においても重要な役割を果たす。
      牛疫の常在地やワクチン接種が定期的に行われている地域では、子牛は免疫のある母牛から初乳を介して受動免疫を獲得する。この抗体は 11 ヵ月間存続するため、その間はワクチン・ウイルスによる免疫が妨げられる。


臨床診断
      鼻及び目からの分泌物が認められる口内炎・腸炎症候群で、発熱、口腔の糜爛・病変、流涎過多、下痢、死亡のうち 2 つ以上を伴う尋常でない罹病率の疾病にあっては牛疫を疑うべきである。軽症牛疫は、特徴的な症状の 1 つかそれ以上が認められないため、最も診断が難しい。病変は流涙が見られるのと、感染した子牛の一部に一時的に口部病変が認められるだけである。若齢牛だけ感染する場合もあり、罹病率はそれらの若齢牛群中でさえ低く、死亡率はとても低くなるため、それらの年齢層の牛の通常の死亡率と比べて差が認められない。


鑑別診断
      牛疫の疫学的様相は、臨床症状や病変と同様、非常に特徴的である。しかし、牛疫の臨床症状のうち特に発熱、流涙、鼻漏、口内炎、下痢等は他の疾病の症状と似通っている。他の疾病とは牛ウイルス性下痢 (BVD) の致死的な型である粘膜病 (MD)、悪性カタル熱 (MCF) の一部、口蹄疫 (FMD)、小反芻獣疫 (PPR)、牛伝染性鼻気管炎 (IBR)、そして牛丘疹性口炎 (BPS) 等である。その他の疾病で牛疫の鑑別診断の対象とすべき疾病は、牛肺疫 (CBPP) と東海岸熱 (ECF) である。これらの疾病の鑑別診断には疫学的特徴と検査室による検査が重要となる。


検査診断
      検査材料の採集、保存、輸送の方法の詳細な説明を含めた実験室における牛疫の診断方法の詳細は、FAO の「牛疫の診断用検体の採取と世界レファレンス・ラボラトリーへの送付の手引き」、「牛疫の診断」と OIE の「診断検査法及びワクチンに関する標準法マニュアル」を参考にされたい。
      牛疫の推定的な診断後の検査室における確認は、生きたウイルス、ウイルス抗原、ウイルスの遺伝子の一部もしくはウイルス抗体(ワクチン非接種動物に限る)の検出によって行う。

検査診断のための検体の採取と輸送: ウイルス分離に適した検体は以下のとおり:
・凝固していない全血(ヘパリンやエチレンジアミン四酢酸 (EDTA) 等の非凝固剤を添加して採血したもの)
・脾臓、リンパ腺、血リンパの組織材料
・眼スワブ
・リンパ節吸引材料
      ウイルス抗原の検出のため、目からの分泌液、歯茎の壊死片及び、脾臓、リンパ節及び扁桃腺のサンプルを採取する。分泌物及び排泄物へのウイルス排出は、潜伏期間の終わり頃、臨床症状が出現する前に始まる。それは発熱・粘膜糜爛の段階で最高潮に達し、次いで下降に向かい、回復期の初期に停止する。
      検体の採取には、発熱中で粘膜の糜爛と透明な流涙が認められる動物が最も適している。一般に、陽性動物を発見するチャンスを最大にするため、より多くの動物からサンプルを集めるほうがよい。
      2 組の組織材料を採取し、1 組は冷蔵、もう 1 組はホルマリン液に保存する。ウイルス分離のための検体は、抗生物質及び抗真菌剤添加の輸送用培地 (リン酸緩衝液、pH 7.6) に保存するが、ウイルスを殺してしまうのでグリセロールは添加してはいけない。
      ウイルス分離のための検体は、凍らせずに冷蔵状態で実験室にできるだけ素早く運ばれなければならない。もしどうしてもある一定期間、保管しておかなければならない場合は、検体はマイナス 70 度 (マイナス 20 度ではだめ) に保存しなければならない。抗凝固剤不添加の全血を採取し、血清が分離したら遠沈して、得られた血清を用いてウイルス抗体の検査を行う。
      各検体は、強靭で防水性の一次密封容器に納め、吸収材で梱包したうえ、強い防水性の二次容器に収容し、そして頑丈な外箱で包む。さらに耐水インクで送付先を記入し、国立診断検査室、地方あるいは世界レファレンス・ラボラトリーへ発送する。輸送会社、エアウェイ・ビル・ナンバー及び到着時間についての情報を、発送に先立ち検査室に通知する必要がある。

ウイルス分離
      リンパ系組織または血液中の白血球から培養細胞によって行うウイルス分離は、その後のウイルス特性の分析及び分子疫学的調査に不可欠である。しかしその方法は、訓練された専門家と無菌の細胞培養設備を必要とするため、設備が整った国家レベルもしくは専門の地方及び世界レファレンス・ラボラトリーでしか実施することができない。

抗原の検出
      寒天ゲル内沈降反応 (AGID)、対向免疫電気泳動法 (CIE) 及びイムノ・キャプチャー・エライザ法 (ICE) の3種類の検査方法が牛疫抗原の検出に広く使用されており、OIE の「診断検査法及びワクチンに関する標準法マニュアル」に、実施方法が記載されている。
      AGID 及び CIE は、排泄物、分泌物及び組織材料中の沈降抗原を検出する。ICE は牛疫の確定診断及び牛疫と PPR を識別する際に使用される。
      抗原の検出に使用できる他の方法として、免疫組織染色法、蛍光抗体法、電子顕微鏡検査及びペンサイド・テストがあげられる。ペンサイド・テストはモノクローナル抗体を基にしたラテックス凝集反応で、これはまだ野外使用について評価を行っている段階である。

ウイルス遺伝子の一部分の検出
      牛疫ウイルスの遺伝子の一部を、逆転写酵素ポリメレース・チェ?ン・リアクション法 (RT-PCR) によって検出することができる。これは非常に特殊かつ敏感な方法で、専門知識及び専門の装置を必要とする。この方法は、協力センター、世界レファレンス・ラボラトリー及び専門知識と専門の設備を有する国立研究所で実施される。核酸配列の分析によって疫学的に重要な系統発生情報が得られる。

抗体検出
      モノクローナル抗体を利用した特異的な競合エライザ法は広く使用されており、牛疫抗体検出のためのウイルス中和テストに替わるものとなっている。これは確実な検査方法であるが、ワクチン接種による抗体と野外株が原因の抗体を区別することはできない。


牛疫侵入のリスク評価
      牛疫が国内に侵入する可能性のリスク分析は、牛疫のコントロールと撲滅のための国家政策を策定する上で不可欠である。主に考慮に入れるべきリスク要素は以下の通りである:

・国内の家畜もしくは野生動物に知られざる牛疫の感染地域が存在する可能性
・最も近隣の既知の牛疫汚染場所とそこまでの距離
・牛疫危険地域から交易、密輸、季節放牧、遊牧もしくは内戦等によって持ち込まれる家畜の移動の将来的な傾向
・近隣国の状況。近隣国における牛疫の発生の有無や清浄化の状況だけでなく、獣医局の質や牛疫が侵入した場合に発見しコントロールする能力があるかどうかに基づいて見定める
・牛疫が侵入した場合の社会経済的被害の程度
・牛疫が侵入した場合の撲滅難易度

      牛疫が当該国に侵入した際に考えられる社会経済的な被害を想定して、リスク・プロファイルを策定するべきである。この時:

・生産の低下
・食料安全保障そして貧困撲滅への影響
・畜産貿易への影響
・環境への影響(野生動物が大量死するなど)

等を考慮して、非常に高い、高い、中程度及び低いといった難度をプロファイルにつけるべきである。そしてそのリスクを軽減するために必要な措置を定める必要がある。つまりリスクの高い地域から感受性動物を生きているまま輸入することを禁止する、もしくは国境検疫コントロールの強化といったものである。


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写真は Foreign Animal Diseases を転載からした。ダウンロードする --> pdf file: 4.4 Mb